とてもすてきなコでした。

 過去形になってしまいます。あと2カ月で17歳になるはずだったおじいさん犬のマカロン(写真)は、私にとって大切な相棒、同志といった存在でした。

 家族にも言えないつらいこと、悲しいことがあると、いつも彼に話していました。彼はただ黙って聞いて、そっと寄り添ってくれました。

 私が出かけると玄関で待っていてくれ、ゴミを捨てに出たほんのわずかな時間でも、戻ると大喜びで迎えてくれました。パソコンを打ったり、新聞を読んだりしていると、かまってほしいのか、私の足をちょんちょんと突いてきました。ふさふさの白い毛、冷たく濡れた黒い鼻を今でも思い出します。

 なんとなく様子がおかしいと気付いてから、2日で旅立ちました。最期は私が抱いて、「大丈夫だよ、ありがとうね」と声をかけ、家族みんなで見送ったのですが、目の前で命が消えていく様を見るのは、正直とても怖かったです。でも逃げてはいけない、見届けねばと思いました。彼は2回鳴いて脚を痙攣させ、大きく息をして動かなくなりました。寝ているようでした。呼んだら起きてきそうで、その晩、何度も彼の顔をのぞきに行きました。

 私には家族も友達もいるけれど、彼が逝ってしまって独りぼっちの気がします。4カ月たった今でも、外出すると彼が待っているから早く帰らなくちゃと思い、ああそうだ、もういないんだと気付きます。

 高齢だからしかたなかったのか、いやもっと何かしてやれたのではないか、といろいろな思いが交錯します。でも、逝ってしまったあのすてきな相棒に心配をかけたくないので、私も前を向きます。

 彼と私の散歩コースだった運河沿いの土手に、今年も桜が咲きました。

(及川美佳さん 東京都/49歳/主婦)

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