4年前に私と主人は熟年再婚して、くう(写真)を育てることが初めての共同作業になりました。

 裏山に捨てられていたのを、ウォーキング中の主人が連れて帰ったのです。

 ところがこのくう、小さいときには感染症にかかり、少し大きくなると気の強さを発揮して、近所の野良君たちとケンカしては傷を負い、化膿するの繰り返し。動物病院を何度往復したかわかりません。

 さらに主人の運転する車にひかれて尻尾を切断。主人の涙を初めて見ました。

 くうは外が大好きで家に落ち着いていられず、重いサッシの戸を器用に開けて出かけてしまいます。

 ある朝起きると、居間にゴルフボールがころんと1個。そして次の朝にもまた1個。くうが口にくわえて運んできたようでした。

 青い小さな柿が落ちている日もあり、それがまた健気で「何度も病院に連れていってあげたから、ゴルフ好きなあなたへの恩返しね」と笑っていたのですが、ボールが100個を超えると恩返しと喜んでいられなくなりました。

 家猫の行動範囲は案外狭いとか。近所でこれだけのゴルフボールがあるうちはと考えると、ゴルフをよくされる高校の先生のお宅が思い当たりました。

 恐る恐るたずねると、「確かに片付けたはずのボールが、見るたびに減っていて、いよいよ認知症かと悩んでいた」とのことで、さっそくお返しにあがりました。

 当の本人は懲りもせず、最近は畑の小さなジャガイモをくわえてきては自慢げな顔をしています。

 名前を呼ぶと私にだけ返事をするくう。かつお節が大好きで、プロパンガスのトラックが大嫌いなくう。霧島連山の麓で、今日もパトロールに余念がないくう。雄、3歳。尻尾がなくても元気です。

(福永房世さん 鹿児島/55歳/主婦)

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