米国留学時代、寮を出て一人暮らしをしたいがために犬を飼い始めました。無事に卒業し、一緒に帰国。そのうちに彼女と共に嫁入りしました。息子が生まれたばかりの頃、泣き始めると、彼女は足早に息子のそばへ行くのです。さらに、子供を授かったことのない彼女のお乳は日に日に大きくなり母乳まで出てきてしまったのです。あれには驚きました。そんな彼女ともお別れの時が来ました。14歳でした。しばらくは犬は飼えない、と思っていた時です。知り合いに「あなたのような人が救える命がたくさんあるよ」と教えてもらいました。

 1年後、保護犬を引き取ることを家族に相談したら、ぜひそうしよう、と言ってくれました。

 そしてわが家に来て5年目になるのがジーナ(写真、雌)です。飼った当初は何が引き金になって不安にさせてしまうのかがわからず、暴れるジーナを落ち着かせようと、息子と私があざをつくったことも幾度かありました。ただその度にこんな怖い思いをどのくらい経験してきたのか、と思うと涙が出て、ただ抱きしめることしかできませんでした。

 1年くらい経つ頃でしょうか。それまでまったくほえなかったジーナがほえるようになりました。保護団体の方に相談したら、「ジーナちゃんは守る家族ができたのね」と言われ、私たちを守るためにほえているのでは、と教えてくれました。

 周囲に保護犬を飼っていることを伝えると、「偉い」「素晴らしい」といった言葉をいただきます。こうした言葉をかけられることが少なくなる頃には、もっと保護犬が身近になっているでしょう。そんな日が早く来るといいな、と思います。ジーナが私たち家族を愛してくれることに、ただただ感謝しています。

(松尾有香さん 東京都/42歳/英会話講師)

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