子ども時代、わが家にはがいた。一日中どこで何をしているのかはわからないが、夜になるといつの間にか必ず帰ってきて、みそ汁をかけたご飯を食べ、家のどこかで寝ていた。そんな昭和の猫……。

 今の時代、終日、いや生涯、家の中で猫は暮らす。

 5年前、マンション9階のわが住まいにも猫が来た。ペットショップでたまたま目が合い、運命を感じた(?)息子が、唐突に猫を連れてきたのだ。

 が、もちろん猫の世話は99.9%私の役目だ。なぜなら暇だから……。

 なので、当然、命名権は私がもらった。スコティッシュフォールドのキャリコ(三毛)、雌。私は彼女(写真)に“あんず”と名付けた。一見かわいらしい名前だが、命名の背景にはある意味が隠されている。

 私、こう見えて競走馬に詳しい。もう亡くなってしまったが、かつて米国にブライアンズタイムという良血馬がいた。彼は日本に種牡馬としてやって来た。その名前の一部をもらったのだ。もちろん、周囲の人たちはこの事実を知らない。「なんて女の子らしい名前でしょう」と言われる。だが、馬の名前をもらったのが悪かったのか、あんずは女ながら暴れん坊になってしまった。

 彼女は抱っこキライ、爪切りキライ、ブラッシングキライ、もちろん風呂も大キライ。強引に促すと噛まれてしまう。それも容赦なく。猫を飼う人たちは普通にこなすことだろうに。

 また、彼女は絶対に人と一緒には寝ない。しかも寝場所が毎日違う“日替わり”寝床だ。

 まあ、この孤高の姿がいいといえばいい(負け惜しみ?)。家族がみんな癒やされていることは間違いない。今、家族のうち、誰とあんずが初めて夜を共にするか、賭けをしているのだが……。

(山崎睦子さん 神奈川県/71歳/主婦)

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