一人暮らしでも飼いやすいと聞き、社会人4年目に飼ったのは雄のフェレットだった。名前はシャロン(写真)。

 犬やのように心が通い合うとは思っていなかったが、ふたりの時間が増えるにつれ、彼は私の言葉を理解するようになった。

「ジャンプは?」と膝をたたくと、ムササビのようにとびつく。抱っこして「鼻ペロは?」と聞くと、ざらついた舌で鼻をなめてくれた。

 フェレットはケージで飼うのが通常だが、いつのまにか部屋で放牧状態。ベッドの下が住みかとなった。

 シャロンは少しずつ餌を運び出して部屋のあらゆるところに隠した。ベッド下や、脱いであったパーカーのフードの中など、掃除をするごとに餌が出てきて「困った子だね」と笑った。

 疲れて帰っても、クククッと鳴いて寄ってくる姿に癒やされ、一人暮らしの夜も、シャロンの寝息がベッド下から聞こえ寂しさを吹き飛ばしてくれた。

 6年目に内臓に腫瘍ができ、シャロンは手術が必要になった。フェレットの6歳というのはまあまあなおじいさんだ。でも、5時間にも及ぶ手術に耐えたシャロン。疲れきって動けないはずなのに、私が顔を見せると起き上がり近づこうとするので、面会はそこまでとなった。

 翌日、仕事中に動物病院から着信があった。静かに息を引き取ったとの知らせだった。やはり体力がもたなかったのだが、苦しむことはなく、安らかに眠ったという。
 あれから約1年がたつ。引っ越し準備をしていたら、運び出したベッドやクローゼットの下からシャロンが隠した餌が大量に出てきた。

 あの子、いつのまにこんなに隠してたんだ!? 餌をくわえてベッド下に走りこむ後ろ姿を想像して、懐かしく笑ってしまった。

(本田紗弓さん 三重県/32歳/会社員)

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