写真のがうちのライ(雄、7歳くらい)である。
 右目がブルー、左目が金色のオッドアイのライは、2014年のゴールデンウィークの最終日、広島県廿日市市にある猫シェルターのMさんが、「離れがたい」と呟(つぶや)きながら連れてきてくれた。
 急な生活の変容に驚いたらしく、丸一日食べもせず、排泄もしなかった。シェルターではたくさんの子猫が駆け回ってライの背に上がったり、鼻先を跳んだりしていたが、ライはじっと我慢して、怒りもしなかった。子猫の面倒を見る辛抱強い性格とのことだった。
 私と娘はその姿を見て引き取りを決心した。後で聞くと、他の猫から圧倒的な信頼を勝ち得ていたライがいなくなって、シェルターの子猫たちは、しばらくライを捜していたそうだ。
 ライは11年のクリスマスごろ、福島原発近くの廃コンビニで、吹雪の中、ゴミ箱を漁っているところを保護された。その後、2カ所のシェルターを経てわが家に来た。元の飼い主は震災の日に亡くなったと聞いた。
 ライと名付けたのは1カ所目のシェルターの職員で、雷みたいに怒って引っかいたからだそうだ。だがMさんもうちの家族も、ライが穏やかな猫で、人柄ならぬ猫柄がいいことはすぐにわかった。単に脅えていたのだ。わが家に来てからの彼は、とにかくよく食べて、娘から「大来(おおぐ)ライ」という立派な(?)名ももらった。
 ライは時に「ワーン」と犬みたいに鳴く。犬猫シェルターが長かったせいかもしれない。そのたびに、「猫が犬みたいに鳴くから世の中がややこしくなるのよ~と説教をしてみる。
 しかし、現にライたちペットまでもが原発事故で辛酸をなめたのに、活断層だらけのこの国土に原発が多数あることのほうがもっとややこしいかもしれない。

(川井八重さん 広島県/61歳/教員)

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