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風太(写真、雄、14歳)が鹿児島の南の島にやって来て1年が過ぎた。私が両親の介護のため、長年住みなれた京都から故郷である徳之島に移り住むことになったからだ。
風太の飼い主は、実は娘だ。小3のころ、「犬が飼いたい」と言い続け、ちょうど近所で生まれた風太を迎えた。私も仕事の帰り、早く風太に会いたくて、いつも全速力で自転車のペダルをこいだものだった。
娘はそのころから学校に行きたがらなくなった。
保健室の常連だった娘に、先生が「学校に犬の写真を持ってきたら?」とアドバイスしてくださったので、風太の写真を可愛らしくレイアウトして持たせた。
朝、その写真がないとパニックになり、必死に捜したこともあった。娘は風太効果で、嫌々ではあるが学校に行けるようになった。
そして思春期。相変わらず学校は好きではなかったが、写真を持参する必要はなくなった。今では目標を持つ立派な大学生である。
娘の成長を傍らでずっと見守り続けていた風太なので、娘は風太を徳之島に連れていくのに難色を示していた。しかし多忙な子どもたちに風太の世話は難しく、最終的には納得した。
生きていくというのは大変なことの連続だ。私は病を得、離婚も経験した。
私自身も娘同様、風太に幾度となく支えられてきた。今もそうである。介護は、きれいごとで語れないこともある。つらいことも多いが、両親も風太を可愛がってくれるのが救いだ。
初めは京都との環境の違いに戸惑いを見せていた風太だったが、今ではすっかり慣れた。
きれいな海と空のここ徳之島で楽しく過ごそうね。飛行機は嫌いな風太だけれど、また京都にも行こうね。だから、ここに来たことを許してくれるよね? 風太。
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