5年前の6月、段ボール箱に入れられ、捨てられていた子の3兄妹。近所の子どもたちに拾われ、巡り巡って私の家へやってきた。
 生後1カ月くらいの小さな子猫で雄2匹、雌1匹。「飼ってもらえませんか」と子どもたち。「これもご縁かな」とふと思い、引き取ることにした。
 3兄妹が拾われたのは、梅雨の合間、1日だけ雨が降らなかった日。拾われていなかったら、ふたもない段ボール箱の中、雨に打たれて息絶えていただろう。
 子猫の名前を決めなければならない。くっついて眠る2匹を守るように隣に座り、時折鳴きながら私を見ている雄猫。「ありがとう」と言っているのかなと勝手に思う。そうだ。キミは長男かもしれない。だからイチロー(写真右)。もう一匹の雄猫はジロー(同中央)。メス猫は小さいからチー(同左)にした。
 小さな命が三つ加わることで、生活リズムは一変した。離乳食を作り、一匹ずつ食べさせる。便が出ないときは脱脂綿を濡らし、お尻をちょんちょんとなでる。私はまるで母猫だった。
 今でも私は彼らにとっての母猫らしい。帰宅すると3兄妹が揃ってお出迎え。寝ていると、代わる代わるおなかの上に乗ってきてゴロゴロとのどを鳴らす。朝は眠っている私の頬をベタベタと触ってくる。
 猫の気持ちはわかるようになった気もするが、言葉はわからない。でも、3兄妹にもこれだけは言いたいということがあると思う。
「ぼくたちみたいに他の猫を捨てないでください。あと、ぼくたちを産んでくれたお母さんに伝えてください。兄妹みんな元気にしているよ、って」
 私の隣に座っているイチローに聞いてみる。「当たってるかな?」。イチローは私をじっと見ながら、「ニャー」と短く鳴いた。

(川畑正和さん 鹿児島県/教員/48歳)

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