9月15日は祖父の命日。2014年のその日、仕事を終えて帰宅すると、家族が段ボール箱を囲んでいた。のぞくと、中には片手に収まるほどの小さな雄の子がいた。
 家のすぐそばで、ひとりで鳴いていたのを姉が見つけた。親猫とはぐれてしまったのか、心ない人に捨てられたのかはわからない。
 すでに3匹の猫が暮らしている猫好きなわが家。放っておけるわけがない。小さな命を守るため、忙しい日々が始まった。
 子猫のための“夜勤”は交代で行った。当番の日は、彼を寝床代わりの段ボール箱ごと寝室に移動させ、眠りにつく。
 数時間たつと、カサカサせわしい音とミーミー鳴く声で目が覚める。ミルクの時間だ。粉ミルクを作って、スポイトで口元に運ぶ。なかなか上手に吸えないが、彼も懸命だ。スポイト数回分で小さなおなかはいっぱいになり、また眠る。最初は3時間おきだったので寝不足になった。
 1週間たつとチョコチョコ歩くようになり、ミルクもチッチッチッとリズムよく飲めるようになった。
 トイレで初めてウンチができた日は、「よくここまで成長した」と、家族みんなで大喜び。当時、テレビからよく聞こえていた中島みゆきさんの「麦の唄」からいただいてムギとした。
 ムギはすぐに大きくなった(写真)。7歳の雄猫キナコはよきレスリング相手だ。16歳を超えた雌猫2匹は、やんちゃなムギにはノータッチである。
 身軽なので服に爪を立てて父の肩まで登ったり、廊下をダッシュで往復したり。ムギはまだまだ好奇心旺盛な若猫だ。
 小学生のころから20年、縁あって個性豊かな猫たちと暮らしてきた。これからも感謝を込めて猫たちの命を大切にしたい。

(玉井理紗さん 愛媛県/29歳/会社員)

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