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「親の不注意」──民家の2階のベランダで遊んでいた幼児が落下。物干しざおとプランターがクッションになり無傷。レンガの上に落ちていたら全身打撲ではすまなかった──落ちたのが人間で、救急車でも呼ぶ騒ぎになっていたら、こんな記事になっていたかもしれない。
それはベル(写真、雄)がまだよちよち歩きのころのアクシデントだった。
私が2階の部屋で雑用をしていたら、クーン、クーンというベルの声が下から聞こえてきた。ベルはベランダにいるはずでは!? でも、さっき何か音がした!?
つんのめるぐらい慌てて階下に下りたら、ベルは階段の下にいて、泥だらけで震えながら私を見上げ、鳴いていたっけ。ベルはまだ階段を上がることもできないほど小さかったのだ。
まさか、ベランダの柵のすき間から落ちるなんて。落ちた後、きっと何が何だかわからないまま、開いていた1階居間の窓からやっとの思いで家の中にはい上がり、必死で呼んだんだね。ごめん、ごめんね!
獣医さんに向かう車の中で抱っこしている間もベルは震えていた。大事をとって1日入院したが、先生は「全身打撲ですんでよかった。運がよかったですよ」と言ってくれた。
振り返れば、家族の間で犬が欲しいねという話になったとき、私は「寄りかかれる大型犬がいい」と言った。お嫁さんがペットショップで「目が合っちゃった」とベルに一目惚れして、事はなるように進んだ。
あの落下事件から6年、トラウマになったふうもなく、ベルはたまにベランダから道行く人をのんびり見下ろしている。記憶にないだけかもしれないが……。
お互いこれから先も何があるかわからないけど、今は寄りかかったり寄りかかられたり──シアワセだよ。
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