仕事中、いつも僕は見つめられています。じーっと視線を送ってくるのは、愛の「くるみ」(写真)。雌猫、4歳です。
 なぜ名前をくるみにしたのかというと、初めて見たときに木の実のクルミと見間違えたからです。
 くるみはもともと野良猫でした。子猫だったころ、僕が山で拾ってきて庭に集めておいたクルミの山の上で寝ていました。でも、毛の色があまりにそっくりで、僕はそれに気がつきませんでした。しかし、近づくと何かが動きました。よく見ると、子猫がいたのです。
 くるみはすぐに僕に懐きました。
 僕はカーネーション農家を営んでいます。ハウスでカーネーションを育て、選花場でチェックして出荷します。ハウスと選花場は隣接していて、くるみの住まいは選花場です。
 写真は、僕が選花場で作業しているときに撮ったものです。この写真では見えませんが、丸まったくるみのおなかの下には2匹の赤ちゃん猫がいて、おっぱいを吸っています。もらい手は決まっているので、すくすく育ってほしいと願っています。
 くるみは、僕がハウスで作業しているときも、選花場で作業しているときも、いつも近くにいて僕をじーっと見ています。彼女はいつも僕のことを見つめているようです。
 僕はかなりな猫バカですが、くるみもくるみで僕バカなのかもしれません。
 仕事はやはり大変です。 そして、農家というのは基本的に孤独なものです。そんなとき、誰かに頑張っている姿を見てもらっていると思うと、もう少しだけ力を振り絞って頑張ってみようと思えるものです。
「猫の手も借りたい」という言いまわしがありますが、僕の場合は“猫の目”を借りているのでしょうか?

(瀧本拓也さん 長野県/32歳/農業)

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