ミミちゃん(写真)がわが家に来たのは、生後3カ月くらいのとき。母親の野良に置き去りにされたようでした。
 ミャーミャー鳴く子猫を放ってはおけず、エプロンにくるんで連れ帰りました。
 私の食器でペチャペチャとミルクを飲み、ペット用品などないわが家でミミちゃんはすくすく育って、今年で10歳になりました。
 わが家は200世帯もある築35年の高層マンション。ペットを飼っている家庭も多いようですが、ミミちゃんは一度も玄関を出ず、あまり鳴きもせずに今まで暮らしてきました。
 ところが今年の夏、あまりの暑さに、私が買い物に出る際、するりと玄関を出て、冷たいコンクリートの通路にペタンと腹ばいになったら、「あら、気持ちいい」と思ったようです。そのときはすぐに家に入りました。
 2度目はもう少し冒険しようと思ったのか、6階のわが家から5階までツーツーと階段を下りていきました。体重が6キロもある箱入り娘ゆえ遠くには行くまいと思っていたのに、ちょっと目を離した隙に姿が見えなくなってしまいました。
 しばらくするとドアをドンドンとたたく人があり、出てみると5階の方でした。
「お宅の猫がうちに入り、たんすの上に乗ったまま下りてこないから、近所の人に追い出してもらいました」と怖い顔でおっしゃいます。
 慌てて下りていくと、ミミちゃんはそのお宅の前の廊下の隅で、鳴きもせずじっとしていました。
 すぐに抱いて帰り、衣服を改めてお詫びにうかがいました。
 どうやらその方は犬派だったようです。無事に保護できてほっとしました。

(福島さとこさん 東京都/78歳/無職)

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