「元気な犬をお願いします」と、なじみのペットショップの店主にオーダーしていたら、雄のトイプードルを連れてきた。
 名前は「楽ちゃん」(写真、5歳)。朗らかな名前のイメージからは程遠く、初対面であるにもかかわらず、吠えながら匍匐前進の体勢で詰め寄ってくる。こちらから近づこうとすると、より一層大きく吠えながら、じりじりと後ずさりする。
 飼い主には反抗的であるのに、姉や、姉の友人とその子供である姉妹には特別の親近感を寄せているようだ。
「今日はHちゃんとSちゃん(姉妹の名)が来るよ」と語りかけると、窓にはり付き、いつまでも外を見ている。そして2人が玄関に着くと、飛びついて顔をなめ回す。愛らしさ全開でじゃれる姿を見る度に、あの匍匐前進をやってみろと言いたくなる。
 何より驚かされるのは、その食欲である。ある朝、職場に持って行くはずの弁当箱が散乱していた。楽ちゃんを探すと、はちきれんばかりのおなかで、したり顔をしてこちらを見ていた。
 またある日、テーブルに置いていた箱入りのケーキがない。足元を見ると、口いっぱいにケーキを頬張った楽ちゃんが、ケーキと共に透明のセロハンをツルリとのみこむのが見えた。消化器官に詰まると大変だ。獣医師に問い合わせると、多くの場合、消化されずに出てくるという。飼い主の焦りをよそに、楽ちゃんは生クリームまみれの顔を呑気になめまわしていた。
 先日、件のペットショップの店主が「どうです、元気な犬でしょう?」と様子を見に来たので、言っておいた。「元気すぎる犬をありがとう」
 そう。人間も犬も元気が一番。そんなことを思いながら、今日もスマートフォンに収めたアイツの写真を見てはニヤついている。

(本田洋子さん 大分県/49歳/小売業)

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