ガチャン、ドタン。
「こらマイ、静かにしろ」「あら、また、あきとクララの位牌を倒して!」──朝からわが家は、怒声との走り回る音が飛び交う。
 柴犬のあきとクララがそれぞれ17年の生涯を閉じた後、わが家にやって来たラロ(写真奥、2歳)は優等生で、言うことをよく聞く。男の子なのにおとなしすぎるくらいだ。御用邸が近いことから、お公家さんと呼んで、かわいがった。
 静かで穏やかな暮らしが1年9カ月続いたが、生後3カ月のキジトラ子猫マイ(同手前)が家族の一員に加わった今年の6月から、わが家は戦場と化した。
 マイは水戸市で保護された。女の子だしラロのように穏やかだろうと、徳川御三家の一つ、水戸家のお姫様になぞらえ、マイ姫と呼ぶつもりだったが、先入観は瞬く間に打ち破られた。
 台所に侵入して解凍中の生肉にかぶりつく、ごみ箱を開けて残飯に手を出す。部屋中の隙間にもぐりこんでほこりをまき散らす、走り回ってモノを壊す。特に餌に対する執着心は異常だ。
 かくして、台所と隙間はすぐに封鎖された。
 悪は伝染すると、どこかの小説にあったような気がするが、マイの奔放な行動はラロに影響した。朝晩の運動会は定着し、大格闘をするかと思えば、朝夕の食事時には給餌器の前でニャーニャーの大合唱。
 ラロは鷹揚な性格で物怖じしないマイを受け入れ、先住猫の特権も主張せず、ふたりは仲良しだ。キャットタワーの最上段、日がさんさんとあたる特等席がマイに乗っ取られるのに、さほど時間は掛からなかった。
 そういえば彼女をマイと名付けたのは家内だ。テレビドラマの主人公・花咲舞の行動力旺盛な性格が気に入ったためだ。わが家の、女が強いという家系は、猫にも引き継がれたらしい。

(森隆政さん 栃木県/63歳/無職)

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