ある日、子より少し大きい猫が、家の前で鳴いていた。すぐにどこかに行くだろうと、適当にごんた(写真上、雄)と名づけた。予想に反して彼は、すっかりわが家に定住。おしゃべりニャンコに成長し、話しかけられるとにゃーにゃーと大きな声で返事をする。
 家の近くの階段を上っていると、少し前にごんたの姿がある。彼は私に気づくと、必ず2度振り返り確認。にゃーにゃーと、わざわざ迎えにかけ下りてくる。そして、私の足の間を8の字を描きながら一緒に帰る。
 6年前のある日、私は体調が悪く早退した。ごんたも数日前から何だかしんどそう。ごんちゃんもしんどいね、おねえちゃんもしんどいよ、と語りかけた。
 その夜、ごんたはいつものように外に出たいから開けてーっと、ニャーと鳴いた。そして、私の顔をしっかりと見つめながらライオンのように勇ましい足取りでドアから出ていった。
 開けたドアは、風で勢いよくバンッと閉まった。それからごんたは戻らない。
 父母と捜したけれど、どこにもいなかった。かっこいい最後の姿だったな。
 18年も一緒だったので、ショックは大きかった。そんな頃に、姉の家からやってきたのが3歳になったばかりのちょこまろ(写真下、雄)だった。
 ちょこまろは夜、早く眠りにつく。一番早く寝る父は家の中で犬を飼うのに反対で、ちょこまろに冷たかった。ところが、ちょこまろはお構いなし。毎晩、父の布団に潜りこみ、すっかり父をメロメロにした。
 母には毎晩、外に出ようとせがみ、夜景の中を電車が走る様を高台からだっこで眺めるのが大好き。犬ながら鉄ちゃんだ。
 もうすぐ9歳になるちょこまろは、家族を癒やす仕事をしっかりとごんたから引き継いでくれている。

(横田靖子さん 兵庫県/38歳/非常勤職員)

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