「まだ赤ちゃんだで、仕方ないかあー……」
 こぶしで握ればすっぽり隠れてしまう小ささで、私の指と指のすき間を頭でこじあけようともがくポンスケ。今日も必死で爪をたて、私の手から逃れようとする態度(写真)につい愚痴が。
 ゼニガメのポンスケに遭遇したのは日用雑貨店のペットコーナーだった。水槽内をわがもの顔で泳ぎまわる彼を発見し、ガラスの壁に指を当てると物おじせずに寄ってきたのが愛らしくて購入した。
 私の前にポンと登場した感じだったのでポンスケとつけた。体長2センチ、茶褐色の甲羅に長いしっぽの雄のチビガメだ。
 正直、カメは二度と飼うまいと思っていた。3年あまり前、22年以上も私たち家族と暮らしてきたゼニガメのクロボーを病気で失った。クロボーは人なつっこくて私や兄から片時も離れず、相手にされないとカバの置物や縫いぐるみを後ろ脚で蹴り倒して八つ当たり。好奇心旺盛で追いかけっこも大好き。元気いっぱいの彼も、晩年には体力が衰えた。のどや手足が腫れあがる原因不明の病気にかかり、吐血を繰り返したあげく、私の膝の上であの世に旅立った。
 いつもそばにいられるよう、兄と涙を流しながら庭に埋葬したが、以来、兄妹そろって嘆きの日々だった。
 主のいない水槽を見るたびに胸が詰まり、動物のテレビ番組も避けてきた。しかし、悲しんでばかりでは彼が浮かばれない。いずれは私たちもそばに行くし、寂しくないじゃないかと心をリセットした。
 もともと動物好きの私、ペットコーナーでポンスケと出会ったのも何かの縁だ。クロボーの分まで可愛がろう。まだ慣れてはくれないけど、いつかは家族になって、ポンスケも長い歴史を作ってほしい。

(長瀬久美子さん 愛知県/55歳/パート清掃員)

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