17年前の9月27日、待望の子犬がわが家にやってきました。
 当時、私は長崎県の離島に勤務。そこは住民100人に対して野生のシカが200頭もいたり、イノシシやキジが目の前を闊歩していたりする県内屈指の僻地でした。その上、仲のよかった同僚が相次いで転勤し、子どものいない私と妻は寂しい日々を送っていました。
 その寂しさを紛らすため、二人が大好きな柴犬を飼うことに決め、この日を迎えたのです。
 当日、いそいそと船着き場に迎えに行くと、9時間もの船旅を経て船から下りてきた子犬は、さぞかしぐったりしているだろうとの心配に反し、凛として堂々たる姿をしていました。
 それを見て、私と妻は同時に「この子の名は『元』だ」と叫びました。元気の「元」です。そして、彼は名前のとおり元気いっぱい、愛情たっぷりにすくすくと育ちました(写真)。
 1日4回の散歩とボールキャッチが日課ですが、水泳も大好きで、とある海水浴場では飛び込み台から飛び込んで周りの人たちを驚かせたこともあります。
 離島勤務が終わり本土に帰ると、実家の父は「犬を家の中に入れるな!」と厳しい態度で、夜の間だけという約束で玄関に入れさせてもらいました。が、それも一時のこと。甘え上手な元は父の態度をすっかり軟化させ、今では座敷だろうと床の間だろうとお構いなしに歩き回っています。
 そんな元も最近では体が弱って足元がおぼつかず、ヨタヨタしています。散歩のときなど、近所の方が寄ってきて、「けなげに生きとるね」とか、「長生きせんばよ」などと励ましの声をかけてくださいます。
 人間でいえば80歳を優に超えていますが、もっともっと元気に長生きしてほしいと願っています。

(福重弘孝さん 長崎県/55歳/公務員)

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