茶太郎(雄、写真)がやって来たのは3年前の震災の後。結婚8年目でやっと授かった子を2カ月で流産し、私たち夫婦は目標を失いかけていた。老後は犬が欲しいねと言っていたのだが、震災が起き、やりたいことは今やらないといけない気がしたのだ。
 茶太郎の真ん丸な目と満面の笑みが待っていると思うと、入社以来ずっと遅かった帰宅が早くなり、夜の散歩が日課になった。
 茶太郎はポメラニアンにしては長時間歩き、速度も速い。冬の寒い夜も平気。ただ、私の帰りの遅い日は決まって玄関かリビングに怒りのウンコが! ごめんごめん。1日中、ひとりぼっちだったんだもんね。
 週末は公園とドッグカフェに行く。食べることに目がない茶太郎はカフェへの道を即座に覚え、こっちこっち!とすごい勢いで引っ張っていく。そして、自分のお皿が出てくるまで椅子にお座りしてひたすら待つ。その健気な姿を見るとついつい食べさせてしまい、太らせてしまった。それまで喧嘩の多かった私たち夫婦だが、「ダイエットさせなきゃ」などと、茶太郎のことで共に笑ったり悩んだりするようになった。
 彼が来て2年目の春、私は再び妊娠した。半ば諦めていたのに授かったのだ。
 また流産するのではと冷や冷やする日が続いたが、おなかの子は順調に育ち、臨月を迎えた。あと少し。毎日の散歩が体質改善につながったためか、仕事中心の生活をやめたためか……。いずれにせよ、茶太郎の笑顔が赤ちゃんを運んでくれたに違いない。産休に入って毎日私が家にいるので、茶太郎は1日中べったり。暖かい日差しの中を散歩したり、一緒に昼寝したり。大きなおなかに耳をあてて寝ている茶太郎くん。もうじきお兄さんになるんだよ。弟を可愛がってやってね。

(吉川ひろさん 東京都/36歳/会社員)

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