ノラシマちゃん(写真)はサバイバルの王様です。
 初めて出会ったのは8年前。彼は隣の空き地を深く掘って用を足すと、一生懸命土をかけ、においをかいでまた土をかけ、全くわからなくして立ち去りました。
 その毅然とした態度に感動して「うちでエサあげるからおいで」と誘っても、見向きもしません。2メートルも跳び上がってセミを捕り、田んぼのバッタやイナゴを食べ、決してゴミ袋を破ったりはしません。
 1年も声をかけ続けたのに、シマちゃんは人間にはかかわりませんでしたが、そのころから雌の子猫がついて歩くようになりました。
 シマちゃんはその子に虫を捕ってあげるのですが、うまく受けとれなくて逃がしてしまいます。すると、シマちゃんは子猫に私の置いたエサを食べさせるようになりました。でも自分は横で見ていて食べません。
 冬は小屋を作ってあげました。中に毛布を貼り、カイロも入れて待ちましたが、入ってくれません。3年もたったころ、夜、シマちゃんがその子猫のヨメちゃんを抱えて中で眠っているのを見つけました。その可愛いこと!
 そのころからシマちゃんもごはんを食べてくれるようになりましたが、幸せは長く続きませんでした。
 5年前、大きくなったヨメちゃんが大通りに遊びに出て、車にひかれてしまったのです。血だらけのヨメちゃんを抱えて帰り、花を添えて葬りました。
 シマちゃんは何度も見に来て、「わあ大変!」と思ったようですが、死がわからず、翌朝からあちこち捜して可哀想でした。
 今では、ひとりになって寂しそうなシマちゃんを、抱き締めてあげられるまでになりました。
 弱いものには優しく、男らしく凛としたシマちゃんは私の人生のお手本です。

(塚原サカエさん 静岡県/89歳/音楽教師)

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