わが家には15年前から飼っているがいます。名前はミー(雌、写真)。メタボですが、真っ白だから膨張色でよけい太って見えるんだと、ミーにメロメロの息子はかばっています。そのミーが、4、5年前、突然姿を消しました。マンションのわが家は急な斜面に面しているので、外に飛び出すことは考えにくく、隣家に入れる造りでもありません。
 雨がしとしと降る肌寒い日で、どこを捜しても見つからず、夜になりました。
 食事ものどを通らず、「どこへ行っちゃったんだろう」、家族の会話はその繰り返しでした。私は入浴後も、何かあったらとパジャマには着替えないでいました。
 夜11時すぎ、雨が上がりました。すると遠くのほうでニャーオと小さい声が聞こえるではありませんか。
 帰ってきた!!
 ベランダの窓を開けて下を見ると、ボンヤリと白いものが! ミーだ!! 体が埋まりそうな草むらをかき分け、必死ではい上がろうとしていたのです。私たちが行ける場所ではないので、「おいで、おいで」と呼ぶのが精いっぱいでした。
 泥だらけでびしょびしょになったミーが私たちのところに戻ってきました。
 ところがそれから1週間ほどすると、ミーがまたいなくなりました。やはり雨の日でした。そして、その次に姿を消したのも雨の日でした。でも道を覚えたらしく、時間がたつと戻ってくるようになりました。
 そんなある日、小雨が降っている時、ミーがベランダにある箱の上にちょこんと座り、空を見上げていました。それも、2時間も3時間も身じろぎもせずに。
 やっとわかりました。ミーは雨が大好きだったのです。だから雨の日に何度もお出かけしたのでしょう。
 雨が静かに降っている今も、ミーはベランダでじっと空を見上げています。

(多田ふさ江さん 茨城県/65歳/主婦)

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