昔、ノラだったワタシ(写真左)は、の婚活集会でこの家のオス猫、モリモト君(円内)と知り合った。白黒ブチで優しいモリモト君と、虎斑でほっそりとしたワタシは互いに一目で気に入って恋猫同士になった。
 はじめのころはデートの帰りにモリモト君の家に寄っても、警戒心が勝ってすぐに逃げていた。けれど何度も通っているうちに、いつの間にかモリモト君の「彼女」として、この家に居座るようになった。
 一方、この辺りのボスでもあるモリモト君は、縄張りのパトロールで一日中忙しいことが多くなった。たまに帰ってきても、エサ場に直行してガシガシ食べるとそそくさと出ていってしまったり、すぐにグーグー寝てしまったりした。それでも良妻賢母のDNAを持つワタシは、ヒステリーも起こさずいそいそと出迎えたり、そっと寄り添って毛づくろいをしてあげたりして仲良く暮らしていた。
 やがて子猫たちが生まれたけど、肝心のモリモト君似の子が一匹もいなくて申し訳ない気持ちだった。
 でもモリモト君はそんなことを気にするふうもなく、ワタシと子猫たちを守ってくれた。
 ところがそんな幸せな生活も長続きはしなかった。ワタシたちの出会いから何回目かのひどく暑い夏の日、パトロール中に倒れたモリモト君はそのまま帰らぬ猫となったのだ。
 こうして未亡猫となったワタシは、正式にこの家の飼い猫として迎えられ、もう子猫を産まなくていいようにしてもらった。今は娘猫や孫猫たちに囲まれ、毎日楽しく暮らしている。
 ワタシはもう5歳ぐらいの落ち着いた熟女だけど、家の人から「(モリモト君の)彼女ちゃん」と呼びかけられると昔を懐かしく思い出し、ちょっとうれしい気分になる。

(小西壽美子さん 長崎県/72歳/主婦)

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