まさに運命的出会いと言えようか。長女がペットショップで目が合ったとたん、一目惚れしてしまったのがこのヨークシャーテリア(写真、6歳)である。
 独断で買ってきてしまったとかで、女の子なので名前はやや古風に「楓」と付けた。高校生の孫2人はたちまちメロメロになったが、問題はあまり犬好きではない長女の夫。少々おかんむりだったらしい。
 そんな訳で世話はしないとでも宣言されたのか、長女が2、3日留守をするときは、楓がわが家にホームステイに来る。決まった量のペットフード以外やらないでと言われているが、そこは甘いジジとババ。彼女がいつもおなかをすかせている様子を見るのがつらい。
 台所に私が立つと必ずやって来て、後ろ脚で立ってスカートに前脚をかけ、クインクインと甘え声を出す。上からキャベツのかけらでも落ちてこようものなら、たちまち食べてしまう。
 そんな姿に、我々は牽制し合いながらも、つい食べ物を与えてしまうのである。
 楓はサツマイモが大の好物で、料理していると匂いでそわそわ落ち着かなくなる。「ほんの少しよ」とセーブしながら与えるが、まだ残りがあるよとクインクインと鳴いて裾を引っ張り、台所に誘導しようとする。本当に食いしん坊なのだ。
 しかし、この小さな生き物が大きな力を発揮したことがあった。
 下の孫の親友が事故で亡くなったとき、孫は涙にくれ、誰とも口をきかずに閉じこもってしまった。じっと楓を抱きしめながら。
 その悲しみがいつ癒えるか心配だったが、やがてなんとか元気を取り戻した。その原動力となったのがこの小さな楓だった。
 彼女に食べ残すほどおなかいっぱい食べさせてやりたいが、それができないのが残念である。

(三宅詠子さん 岡山県/77歳/無職)

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