第14回 行き詰ったときは、旅に出る

大谷由里子
 わたしは、行き詰ったら旅に出る。

 友達や夫や家族を誘って旅に出ることもあれば、ふらっとひとりで旅に出ることもある。

 ふだんとまったく違う世界に身を置くだけで、新しい考えが浮かぶこともあれば、悩んでいたことがちっぽけなことに思えることもある。

 美味しいものを食べたり、温泉に浸かったり、町歩きを楽しんだり、博物館に行ったり、ゆっくりしてみたり。

 いろんな楽しみ方をしてみる。

 旅行会社で働く友人の男性に尋ねたことがある。

「どうして、旅行会社に就職したの?」

 彼から返ってきた答え。

「僕の父親、実業家なんだ。でも、あちこちに女を作る人で、いつも母親とケンカしていた。そんな家庭が嫌で、僕も荒れていたんだ。

 そして、家が嫌だから、高校生の頃からあちこち旅をするようになったんだ。大学生の頃には海外を旅するようになった。

 いろんなところを旅しているうちに『自分て、なんて小さいんだろう』と思うようになったんだ。そして、『父親に女がいてもどうでもいいやん』と、思うようになっていた。

 いつのまにか家族にも優しくなった。そして、できたら旅行会社に就職して、いろんな旅行を企画したくなった。たくさんの人に旅の楽しさを伝えたいと思うんだ」

 その気持ち分かった。

 海を見て、「広いなあ」と思った時、古い建物を見て歴史を感じた時、わたしも、小さなことなんてどうでもよくなる。

 わたしの旅好きは、18歳の時に始まった。

 行きたい大学に行けず、かなり挫折していた。

 でも、その大学で友人ができて、一緒に旅行することになった。

「安く泊まれる」と聞いて、ユースホステルの会員にもなった。

 JR(当時は国鉄)の周遊券を買った。

 歴史好きのわたしは、萩・山口ツアーを企画した。特急券を買うお金もなく、列車を乗り継いでの旅だった。

 松下村塾に行った。

「ここで、明治維新のメンバーが学んだ」

 と、思うとなんか熱くなった。

 もっとも、歴史に興味のないわたしの友人たちは、

「なぜ、こんなところに連れてこられたのだろう」

 と、ちっとも楽しそうじゃなかった(笑)。

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