『五右衛門』の名場面誕生は『グレンラガン』のおかげ!?

中島かずき
『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』、大阪公演が始まりました。
 いろいろと気になったことを修正したりカットしたりして、東京公演初日よりは15分ほど短かくしました。
 上演時間は、だいたい3時間30分程度になります。
 東京公演中から少しずつ手直ししてはいたのですが、大きな変更には手間がかかるので、それなりの時間が必要なのですね。
 曲の変更だと、今回はバンドの生演奏なので、そちらの練習もいります。
 新感線の場合、アンサンブルのみんなが何役も演じているので、着替えも大変です。シーンを短くするのはいいのですが、それによって着替えが間に合わなかったりすることもある。装置の転換の都合や照明の変更もある。そういう様々な事象が絡み合っているので、カットするにも各部署が一斉に確認できる時間がいるのです。
 おおがかりな芝居になっている分、扇町ミュージアムスクエアやシアタートップスでやっていた時のような小回りはきかなくなっているのでしょうね。

 整理した分凝縮された上に、大阪のお客さんのノリもあり、とてもいい初日が迎えられました。
 今回の舞台は京都と堺が中心ですし、豊臣秀吉や石田三成など大阪に縁深い人物も登場している。大阪での公演はまた一段と盛り上がるのではないかと思います。
 特にこの『五右衛門ロック』シリーズでは、クライマックスで変装していた五右衛門が正体を明かして名乗りを上げるシーンと、そこからの流れでメインキャラクター達が悪役に向かって見得を切るシーンで、客席の温度がグッと上がって自然に拍手がわきます。
 水戸黄門の印籠というか、必殺シリーズの殺しのシーンというか、これがなければこのシリーズではないという、お約束のクライマックスになっているのですね。
 でも、このお約束シーンが生まれたのは、ほとんど偶然なんです。

 シリーズ第一作の『五右衛門ロック』を書いていたのは、アニメ『天元突破グレンラガン』に携わっている時期でした。
 この作品に登場するカミナというキャラに、毎回七五調の口上を言わせてほしいという注文が監督から来ました。僕自身は、そういう七五調の名乗りなどに飽きていた時期だったので、最初は「こんな感じですかね」と探り探りやっていた。今の若いアニメ視聴者にこういう大時代的な口上がどう受け取られるのか心配な部分もあった。
 ところが書いてみると楽しかったし、お客さんも想像以上に喜んでくれた。やっぱり七五調で言い切る気持ちよさっていうのは、世代を超えてあるんだなと思いました。
 そんな時期に『五右衛門ロック』を書いたので、悪役達の策略から五右衛門一党が大逆転するシーンで、思わずそれぞれの見得切りを入れてしまったんですね。その場面を書くまではそんなことをするつもりはなかったのに、ほとんど筆の勢いでした。
「まあ、自分が気持ちいいからいいか」と思っていたのですが、『五右衛門ロック』のプレビュー、初めてお客さんの前で上演した時、クライマックスシーン、五右衛門が変装を解いて正体を明かした場面で客席から拍手がわき、その辺から客席の温度がグングン上がっていくのがわかりました。そして、森山未來、松雪泰子、江口洋介、古田新太という面々が順に名乗りを上げていく時には、大喝采だったのです。
 カーテンコールでは、新宿コマ劇場2000人のお客さんが一斉にスタンディング・オベーションになり、僕やいのうえの方が「この芝居、そんなに面白いですか?」と慌てたくらいでした。
 逆境に追い込まれた善人が、ヒーローに救われて、大見得を切る。定番中の定番ですが、その定番も、キチンとやると、こんなに楽しんでくれるんだということを、お客さんに教えてもらった。
 そして、こういう大活劇の王道の今の感覚でやるとしたら、新感線ほどふさわしい劇団はないと、改めて実感したのですね。
 こうして『五右衛門ロック』はシリーズ化となったのです。
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