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笑顔で迎えた『ZIPANG PUNK』東京公演千秋楽

文・中島かずき

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東京最後の公演が終わった後、シアターオーブのロビーから撮った富士山。富士と夕陽と雲の表情が1分ごとに変わって実に美しかったです。撮影は岡崎司氏。

東京最後の公演が終わった後、シアターオーブのロビーから撮った富士山。富士と夕陽と雲の表情が1分ごとに変わって実に美しかったです。撮影は岡崎司氏。

『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』東京公演が無事に終了しました。
 千秋楽はとてもいい天気で、シアターオーブのロビーからは真っ白に雪化粧した富士山がくっきりと見えました。
 公演が終わってから夕焼けの富士山を眺めていると、一分ごとにその表情が変わっていって、とても美しい光景でした。
 この景色ともお別れなのは残念ですね。

 前回も書いたとおり、最後の一週間はあっという間でした。
 20日に中打ち上げがあったので顔を出した後いろいろあって、結局劇場に行けたのは千秋楽だけでした。
 演出のいのうえひでのりも、「12月までは、まだあと一ヶ月あると思ってたけど、1月に入ってからは早かったな」と言っていたので、僕だけの感覚ではないのでしょう。

 去年の夏、「ああ、『五右衛門』の台本書かなきゃなあ」と焦っている頃、電車に乗ると、しょっちゅうにっこり笑っている蒼井優さんと目が合っていました。
 もちろん本人が電車に乗っていたわけじゃありません。ビールの広告です。電車のドア辺りに張ってあるシールの広告があるでしょう。吊革につかまって前を見ると、あれがちょうど目線に来る。
 とってもいい笑顔で優さんがビールを勧めてくれているのですが、その笑顔が僕には「台本まだ?」と言っているように思えて、「ごめんなさいごめんなさい、がんばりますから待っててください」とむやみに申し訳ない気持ちになったものです。
 その同じ銘柄のビールのCMをこの年末年始にやっていたのですが、もう大丈夫。優さんの姿を見るとむしろ「身体に気をつけて、最後までがんばってね」と暖かい気持ちになるのですから、人間というのは勝手なものですね。

 千秋楽の日、舞台裏で三浦春馬くんに会ったので「大丈夫? 疲れてない?」と聞くと、「元気です。(千秋)楽だから」とにっこり笑って答えてくれました。半分は気合いだったのでしょうが、その日の本番中に、普段はやっていなかった後方宙返りを決めていたので驚きました。客席からも「おお」という声があがっていたな。若さってすごいですね。

 公演終了後、役者たちを中心にした打ち上げがありました。
 その席で、シャルル役の浦井健治くんを見ていたある人間が、ポツリと「ああ、よかった。浦井健治に戻ってる」とつぶやきました。
 本番中の浦井くんは、たとえ楽屋でも、何をしゃべってるんだかよくわからなかったそうです。
 シャルルという役のまんまだったらしいのですね。
 仮にも紀伊国屋演劇賞までもらっている俳優です。よそにいけばシェークスピア芝居の大役をまかされる男なのに、大丈夫か、浦井健治。いや、それだけ役に没入してくれれば、こちらとしてはありがたい限りなのですが、彼の演劇人人生に悪い影響が出なければよいがと、ちょっとだけ心配です。
 でも、舞台の上のシャルルはとてもチャーミングで、どんな瞬間も生きている喜びに満ち満ちていて、ま、多少満ち満ちすぎている時もありますが、それも含めて、凹んだときにシャルルの姿を思い出せば、多少のいやなことは乗り切れそうな気がします。 
 そう思わせてくれるだけ、たいしたものだと思います。

 2月6日からは大阪公演が始まります。
 関西のみなさんとお会いできるのを楽しみにしています。


(更新 2013/1/31 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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