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素直に「おめでとう」と言える一年に

文・中島かずき

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 新しい年を迎えました。
 今年もよろしくお願いします。

 子供時代はお正月というとわくわくしましたね。
 学校は休みだし、親戚は集まるし、お年玉はもらえるし、普段買ってくれない漫画やプラモデルなども買ってもらえるし。僕は兄弟がいなかったので、歳の近いいとこが来て、いつもだとできないトランプやボードゲームなどができるのが本当に楽しみでした。
 ゲームは大好きだったのですが、当時はTVゲームなどなかったので、こういうときに大勢でやるトランプや人生ゲームが、とても貴重だったのです。
 正月前後の本屋に行くのも楽しみでした。
 月刊少年漫画誌や小学館の学年誌なども新年増大号で表紙もにぎやかだし、特別付録などがつき普段よりも一段とかさがあるのがまた華やかな雰囲気を醸し出してくれていたのです。

 あれから相当歳をとった今では、今更正月でもないよという気持ちの方が強いのですが、それでもやはり新年だと思うと、どこか新鮮な気持ちにはなりますね。
 12月31日と1月1日、日付が変わっても、客観的には何かが大きく変わったわけではない。
 ただ人の気持ちの問題です。
 でも、この人の気持ちというのが大きいんでしょうね。

 たまに思うのですが、家というのは結構脆いものですよね。
 たった一枚のガラスで外と仕切られている。金槌一つあれば簡単に割れる。
 あとのことを考えなければ、他人の家に入ろうと思えば、実は簡単に入れます。
 でも、このガラス一枚というのが、意外と割るのに抵抗がある。
 ただのガラス板ならば簡単に割れても、それが「他人の家の窓」という存在になった時は、なかなか割れない。心理的な抵抗が大きくなるのですね。
 今はドアも頑丈ですが、昔は玄関が土間で、板一枚で出来ている引き戸が入り口の家なんかも結構あった。これもその気になれば蹴破ることだって簡単です。
 でも、他人が戸を蹴破って入ってきたという話はあまり聞かなかった。「他人の家に勝手に入っちゃいけない」と幼い頃から教えられてきた社会的なルールが、実は家を一番守っているものだったりするんだろうなあと思うのです。
 そして、そのルールが弱くなればなるほど、家そのものの守りを強固にしなければならなくなる。
 ペルーに旅行したとき、首都リマの住宅街は、どこも塀の上に鉄条網が張られていて、しかもそこに電流を流していると聞いて、「ああ、本当に治安が悪いんだなあ」という印象を持ったのを思い出します。

 元日が特別な気持ちになるのも、幼い頃からの刷り込み。社会的ルールの賜物なんでしょう。
 世間の動きをみていると、「新年なんか祝ってる場合じゃないんじゃない」という気持ちにもなりますが、なんとか来年も素直に「明けましておめでとう」といえる一年にしていきたいものです。


(更新 2013/1/11 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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