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元・高校生も楽しめる「高校生もの」の秀作

文・中島かずき

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『高校生クイズ』が放送されると、夏休みも終わるという感じがしますね。
 夕食をとりながら観ていると、うちの子供達が「つまらなくなった」と文句を言い出しました。二人とも大学生なのですが、自分たちが小さい時に観ていた『高校生クイズ』のほうがよかった。今の学力偏重の番組はつまらないと口を揃えて文句を言います。
 昔は確かにもう少しバラエティ色が強かった。
 今のように本当に知識と学力が試されるクイズ形式ではなく、もう少し見た目も派手だったし運が作用する部分もあった。
「予算が減って、昔のような派手な番組作りができなくったんじゃない?」と言うと、「確かにそうかもしれないけど」と、娘などはまだまだ不満そう。
 偏差値の高い学校しか残れない今の『高校生クイズ』に対して、拒否感を示したくなる子供達の気持ちもわからないではありません。
 でも、一時期、学力が高いことが悪いことのようなイメージが出来て、ゆとり教育が提唱されて、結局近隣アジアの諸国とも差がついてしまった現在、知識があり難問を解く学力のある若者が、その能力を評価される番組があってもいいと、僕なんかは思います。
 走るのが速い若者、サッカーがうまい若者が、その能力を評価されるのに陸上競技の大会やサッカーの大会があり、それがテレビ中継されるのならば、学力の高い若者にもそういう機会があってもいいだろうと思うのです。
 そう、子供達に言っても、彼らは納得いかないふうな顔をして自分の部屋に戻りました。まあ、僕のように50を過ぎた人間と、まだ学生で学校の成績が自身の評価の大きな物差しになる彼らとでは、感じ方が違っても仕方ないのかもしれませんが。

 先日、映画『桐島、部活やめるってよ』を観に行きました。
 原作が刊行された時から、なんとなく気になっていた作品です。
 タイトルを観て「うわあ、いかにも若い人間がつけるタイトルだなあ」と感じていました。
 著者の朝井リョウさんがこの作品で小説すばるの新人賞を受賞したのが19か20のときと聞いて、納得したものです。
 僕だけの感覚かと思ったら、文庫の解説で今回の監督の吉田大八さんが似たようなことを言っていたので、僕と同年配の人間には共通の感覚かもしれません。
 観に行ったのは9/1。映画の日だけあって、ほぼ満員。それも10代後半から20代前半がメインでした。制服姿の女子高生もいたりして、映画を見せたい層に届いている感じがして、こちらも嬉しくなりました。
「ああ、面白かった」というよりは「ああ、そういうことあったあった」と共感したり、高校生特有の自身の不安定さをうまくすくい上げていたり。心をひっかかれたりくすぐられたりゆさぶられたりする、とてもいい青春映画でした。
 特に映画部の神木隆之介くんのうまさには感心しました。
 何より嬉しかったのは、本篇が終わりエンドロールが流れ始めても、誰一人席を立たなかったこと。
 なんだか「この映画を観たいと思った人がきちんと最後まで観た」感じがして。
 僕なんかの年代だと、過ぎ去った時代に思いを馳せ「ああ、いい青春映画だなあ」と落ち着いて観ていられるのですが、『高校生クイズ』に拒否感を示した自分の子供達の顔を思い出すと、若い子が観たらもっと生々しく感情をひっかきまわされてしまうのかもしれないなと思ったりもしましたが。


(更新 2012/9/ 6 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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