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みんなの力で走り抜けた『仮面ライダーフォーゼ』

文・中島かずき

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『仮面ライダーフォーゼ』、この前の日曜日、8月26日に無事に一年間の放送を終了しました。
 最初に東映の塚田英明プロデューサーから連絡をもらったのが、一昨年の12月ですから、この作品に関わってから1年9ヶ月がたったことになります。
 勤めていた出版社を辞めて、最初にやろうとしていた仕事を諸般の事情で降板し、「さあ、会社を辞めたはいいけど、いきなり暇になったぞ。困ったぞ」と思っているところにきた連絡でした。
 でも、物書き専業になったところでこれだけの大きな仕事をやることができたことは、本当にありがたかったですね。
 一年のシリーズのシナリオなんて、会社を辞めたからできたわけですが、辞める前から来ていた話ではなかった。こういうタイミングの絶妙さを思うと、自分は仕事運にめぐまれているなと思います。
 
 最初に打合せに行った時には唖然としました。
 昭和の番長漫画を彷彿とさせる主人公の性格設定。仮面ライダーとは思えない奇抜なデザイン、「学園」と「宇宙」という二つのテーマを一つにする。高校生なので部活で変身ヒーローをサポートするという仮面ライダー部というアイディア。すべてが挑戦的でした。
 正直、内心、もう少し安全パイな企画だったらいいのにと最初は思いました。ですが、長いシリーズをマンネリに陥らずに続けて行くには、こういう刺激的な作品があったほうがいいだろう。むしろ、こんな挑戦的な企画だから門外漢である自分が呼ばれたのかもしれないと思い、気を引き締め直して、打合せにも取り組みました。

 そこからの一年9ヶ月は、長いようで短かったのでしょうね、今になってみれば。
 東日本大震災から福島の原発事故という、日本の骨組みそのものを揺るがすような大事件も起きました。
 地震直後のオーディションは、最初「今、こんなことをしていてもいいのか」という気持ちもありましたが、まだ鉄道も完全には復旧していない中、必死の思いで東北から参加してくれた子がいたりして、その情熱に改めて自分が関わっている番組の名前の大きさを実感したりしました。
 そういう意味では、最初から若者達の情熱には圧倒されました。今回はメインの登場人物が高校生と言うことで、オーディションに来た人間達も若かったのですが、みんなしっかりしていた。
 会社員時代、新卒採用の入社試験の面接をやったこともあるのですが、その時に比べても、はるかに仕事人としての意識は高い印象をうけました。若いとはいえ、それまでも仕事をしてきた人間がほとんどですし、いまや若手俳優の登竜門といわれる『仮面ライダー』シリーズのオーディションですから、受けるほうの気合いも違うのでしょう。
 その中から選ばれたメインキャスト、福士蒼汰くんを初めとする仮面ライダー部の8人の成長ぶりは目を見張るようでした。
 最終回、ライダー部の一人が、他の部員達に別れの手紙を書きます。
 各メンバーへの一年間の思いを語る台詞を書きながら、「ああ、これは各キャストに対して、僕が贈る言葉でもあるなあ」とも思いました。
 彼らの成長が『仮面ライダーフォーゼ』という作品を支えてくれた。
『仮面ライダー』シリーズが続いている今、毎年繰り返されていることではありますが、学園を舞台にした今年ほど、卒業という言葉が似合う作品もないでしょう。

 脚本書きとしては、やれるだけのことはやったつもりですが、振り返ってみれば力及ばずだったところはあります。全ての視聴者が満足してくれたわけでもないでしょう。
 それでも、オモチャの売り上げがすべてとはいいませんが、フォーゼの変身ベルトが歴代最高の売り上げを記録したということは、一定のレベルで子供達が支持してくれたと考えても間違ってはいないはずです。
 仮面ライダー40周年作品として、「小さい子たちに元気を与えるライダー作品に」という気持ちで挑んだチャレンジブルな作品になったと思います。

 とりあえず、僕も『仮面ライダーフォーゼ』を卒業です。
 一年間、ありがとうございました。
 


(更新 2012/8/30 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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