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定着して欲しいアメコミ出版ブーム

文・中島かずき

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 前回の『キャプテン・アメリカ』に関するエッセイが、思っていたよりも反響があって驚いています。
 アメコミなんて一部のマニアのものだと思っていたので、キャプテン・アメリカの話も映画公開の時期の今だからこそ、少しは興味を持たれるのではないかくらいにしか考えていませんでした。
 この何年か、アメコミのスーパー・ヒーローの映画化が続いているので、彼らに対するなじみが少しはできたのかもしれません。
 そういう目で見てみると、確かに今は、続々とアメコミの翻訳が出ているという状況なんですよね。翻訳不況の現在、一定のファンを獲得していると考えていいのでしょうか。
 でも、古いファン(というほど深入りしているわけではないので、こう言うのは気後れするのですが、他にいい言葉も思いつかないので、ファンということにしておきます)である自分にとっては、なかなかそう簡単に信じることはできません。過去に何度も「やっぱりダメだったか」という思いをしてきたので。

 今までに何度かアメコミの出版ブームは起こっています。
 僕が記憶しているのは、まず1980年前後。『スターウォーズ』が大ヒットし、世の中がSFブームにわいた頃です。『スーパーマン』が映画化されたことをきっかけにしたのでしょう。1978年に『月刊スーパーマン』という雑誌が創刊されました。
 この雑誌は、DCコミックスが中心となっていたので、中学の時にスタン・リー率いるマーベル・コミックスが好きだった自分としては、あんまり乗り切れなかった。まあ、マーベル好きと言っても、小野耕世氏のエッセイで知っていただけですので、本編に触れたわけではないのですが。高校時代、博多の紀伊国屋書店まで行って、何冊かアメコミを買ったりもしていましたが、英語がよめたわけでもないし。

 当時の(まあ、現在もでしょうが)アメコミは『スーパーマン』『バットマン』を中心とするDCコミックスと、『スパイダーマン』『ファンタスティック・フォー』『X?MEN』などを擁するマーベル・コミックスの二社が中心でした。又聞きスタン・リー信者の僕としては、DCが保守、マーベルが革新というイメージだったのですね。
 だから『月刊スーパーマン』にはわりと冷ややかだった記憶がある。
 残念ながらこの雑誌は翌年の1979年に休刊してしまいました。 
 ただ、それと入れ替わるように、1980年、光文社が『ポップコーン』という漫画誌を創刊した。これは日本のマンガを半分、アメコミを半分掲載するというきわめて異色な雑誌でした。
 こちらがマーベル・コミックスを載せていた。
 それにあわせて光文社では、新書版で各作品を刊行してくれた。
 タイトルを並べると『スパイダーマン』『ファンタスティック・フォー』『キャプテン・アメリカ』『マイティ・ソー』『ハルク』というメジャーどころの他に『シルバー・サーファー』『ミズ・マーベル』なんてマニアックなものもある。  
 マーベル派だったボクはこちらは雑誌もコミックスも買いました。
 正直、どこまで続くかなと思ってはいたのですが、案の定、雑誌は6号で休刊。それに呼応して、コミックスの刊行もストップしてしまった。
 DC、マーベルともに討ち死にという感じで、「やっぱり、日本でアメコミが定着するのは難しいなあ」と思わざるを得ませんでした。
 そこで一度、アメコミに対する興味は醒めてしまいました。

 なので、1996年に小学館プロダクションから『マーヴルクロス』という雑誌が創刊された時は、「へえ、またアメコミに挑戦するんだ。でも、なんでこの時期なんだろう」と思っていました。
 雑誌が、自分には馴染みの薄い『X?MEN』推しだったこともあり、「いつまでもつのかなあ」と思いながら見ていた。
 またまた不安は的中し、雑誌は翌年に休刊しましたが、小学館プロダクションは単行本の翻訳は続けてくれました。フランク・ミラーの『バットマン ダークナイト・リターンズ』を翻訳出版してくれたのも有難かった。
 この本、1990年くらいにロサンゼルスに出張した時にたまたま本屋でみつけて、英語は読めなかったが絵だけを見てざっくりストーリーは掴んで「これはなんかすごく面白いような気がする」と思って原書を買ってきてたんです。まさか翻訳が出るとは思わなかったし、アメコミの流れを変える傑作だとも知らなかったけど、事情は知らなくても異常な迫力のある作品だったのですね。
 
 雑誌がなくなったので、書籍の翻訳もやめるかな。いつものパターンになるかなと思っていたら、小学館プロダクションは結構粘ってくれている。
 2000年代になり、『X?MEN』や『スパイダーマン』の映画化が成功したあたりから、アメコミのスーパーヒーロー映画が続々と作られ『ダークナイト』のようなメガヒットも生まれるようになりました。
 これも追い風になり、小プロ以外にも一時期はジャイブが、最近ではヴィレッジブックスが頑張って刊行し続けています。
 マニア向けなのかかなり値段は高いけど、翻訳で読めるだけ有難いと思わないと。
 アラン・ムーアの『ウォッチメン』『フロム・ヘル』や、マーク・ミラーの『キック・アス』、カナダの『スコット・ピルグリム』なんかが書店に並んでいるんですから。
『フロム・ヘル』以外は映画化のおかげなんでしょうけどね。

 ちなみに、絵も含めて一番好きな作品は何かというと『キングダム・カム』『マーヴルズ』かなあ。アレックス・ロスの絵が好きなんです。
 彼は映画『スパイダーマン2』のオープニングイラストを描いてましたね。
 アレックス・ロスで検索するとトップに彼のウェブサイトが出ます。ここを見ると、彼の圧倒的にリアルなイラストが幾つも掲載されているので、興味のある方は是非覗いてみて下さい。
  


(更新 2011/10/27 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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