『髑髏城の七人』も製作発表が終わり、いよいよ本格的に稽古が始まりました。
 いくつか取材も受けて、そこでも話していますが、これで5回目の舞台化。7年ごとに再演すると半分冗談で言ったことも、21年続ければまあ本物と言ってもいいですよね。
 今回蘭兵衛役を演じる早乙女太一君が初めて新感線を見たのは『アオドクロ』だとか。その時、彼はまだ12才くらい。初演の時には生まれてすらいない。
 月日の速さに驚かされます。
 若いメインキャスト達が口々に「歴史のある作品に出させていただいて?」みたいなコメントを出していて、「そんな大げさな」と面映ゆく感じていたのですが、冷静に考えれば確かに歴史があると言っても過言じゃないですね。
 自分たちとしては、地続きでやってきたことなのでそれほど時間が経っているとも思えないのですが、考えてみれば『アカドクロ』『アオドクロ』だってもう7年前。小学校に入学した子が中学生になると思えば、今回『髑髏城』を初めて観るお客さんもたくさんいるのだろうなと、改めて思います。

 今まで同じ顔を持つ二人という設定で、一人二役にしていた善役の捨之介と悪役の天魔王を、小栗旬君と森山未來君という二人の役者にわけたことで、今までとは大きく変えなければならないことが幾つか出てきました。
 物語の流れに大きく関わる問題だったので、この修正はかなり手間がかかるぞと覚悟を決めていたのですが、案外簡単に思いつきました。
 手を抜いているつもりはありません。
 ただ、今回の若いキャストをイメージして考えていると、彼らの肉体が導いてくれるようにアイディアが出た。
 こういうことがあるから、芝居の台本を書くのは面白い。
 頭の中だけではない、もう少し肉体に寄り添った文芸作業だと思います。
 一つには小説化したことで、これまで外連味というかハッタリ重視の展開だった物を、もう少しリアルよりの地に足のついた展開にせざるを得なかった影響というのは大きいと思います。
 初演の時には、いのうえ歌舞伎とは言え、次々に変なキャラクターが出てきて変なことをやって笑いを取りながら人物紹介を終えるという導入部だったのですが、「そういうことはもういいや」と素直に思えた。
 今回は、導入部などかなり小説版に近い部分があります。講談社文庫から出ていますので、ご興味があれば手に取ってみて下さい。

 そういえば『髑髏城の七人』の小説を書いたのは7年前。『アカドクロ』の台本を書き、そのあと小説を書き、『アオドクロ』の台本を書いた。
 細かく変えながら、三つ連続して同じシチュエーションの物語を書いたので、途中で混乱してしまった。
 7年前の『髑髏城の七人』で、ラスト近く捨之介はヒロインの沙霧に「以前にお前に○○○って言っただろう」というシーンがあるのですが、その○○○の部分を『アオドクロ』ではカットしてしまっていた。
 いろいろバージョンを変えているうちに自分でも混乱してしまっていた。
 あれは驚きましたね。
 気がついたのが本番始まって一週間くらいたったあと。本番を観ていたのですが、「あれ、捨之介はいつ、○○○といってたっけ」と、自分でミスに気づきました。
 あまりに修正しすぎて頭が混乱していたのですね。
 芝居はあわてて直したけど、その時発売していた戯曲集の修正はできなかった。未だに恥をさらしてます。
 今回はそんな致命的なミスはおかしてないはずですが。