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土曜日の朝、突然に

文・中島かずき

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 先週の土曜日の明け方、寝つけなくて悶々としていたら、なんとなく胃がシクシクと痛み始めました。
 もともと胃酸過多で、焼け付くような痛みがくることはあって、これは水を飲めば直るのですが、それとは違う感じです。
 四、五年前に、あまりに胃が痛んで過呼吸になり、救急車で運ばれて緊急入院したことがあったのですが、その時も最初はこんな風な痛み方でした。
「いやだなあ。うまくおさまればいいが・・・」と思いながら水を飲んだり市販の胃薬をのんだりしたのですが、一向に痛みは治まらない。
 いやな予感が当たったようで、痛みはおさまるどころかどんどんひどくなっていきます。胃が裏側からねじられるような痛みです。まさに前に入院した時と同じ痛みになってきました。吐き気もひどい。でも、腹は下していないので食中毒ではない感じです。
 時刻は朝の7時頃。   
 もうあと二時間待てば病院が開きます。
 前回入院した時は、痛くなったのが土曜の夜で救急病院しかなかったが、点滴受けて一晩寝たら痛みはすっかり治まっていた。月曜日に胃カメラ他の検査をしたが、その時点では悪いところは見つからず、結局原因はわからずじまいでした。
 胃は炎症が起きるとひどいが、直るのも早い。
 まあ、腫瘍などが見つかったわけではないのでいいかと思っていました。
 今回も、1月に人間ドックで胃カメラを飲んだばかり。そこで胃に問題があったわけではないので、潰瘍とかそういうものではないだろう。
 そう考えて、とりあえず二時間我慢しようと思ったのですが、30分もするとかなり痛み出した。
 もうだめだ。心配している家内に「救急車呼んで」と言おうと思った時に、少し痛みが治まってきた。
 ああ、これなら我慢出来るなと、1時間こらえて、近くの病院に車で行きました。
 
 先生が開口一番、「昨日、生肉食べました?」
 ええ、確かに食べました。昨日は長いミーティングが終わったのが夜の10時。そこから焼き肉食べに行って、確かにユッケも食べました。
 しかし待て。と、いうことはこの痛みは、食べ物のせい?
 その時、思い出しました。
 18の時、初めて一人暮らしをして帰省した夏休み。三ヶ月間ろくなものを食わなかったので、ここで食いだめして帰るぞと、実家でしこたま喰らいに喰らう一ヶ月を過ごして、さて明日は東京に帰るかという日の夜、猛烈な勢いで痛み出した俺の腹。
「かずき、こりゃ胃痙攣ばい。食べ過ぎやね」と、心配しながらも呆れていた親父の声。
 ああ、そうか。これは胃痙攣か。50を過ぎて食べすぎで胃が痙攣を起こしたのか。
 しかし、昨日の夜はそんなに食べたか・・・、いや、食べたよ、確かによく食べた。
「中島さんもいい歳だから分かると思いますが・・・」
 先生の声が続く。いや、分かります。皆まで言わんで下さい。これは食べ過ぎなんですね。確かに昨日は、昼に牛丼の特盛り5分で食って、夕方アンドーナツ食って、夜は焼き肉でした。50を過ぎてこれはいかんですよね。
「鎮静剤の注射をうちますが、薬は出しません。あとは消化のいい物食べて睡眠取って」
 それは一時的な痛みで、大したことはないということですね。確かにここのところ睡眠不足だったし、〆切抱えてストレスはあったし、昨日は10時間近いミーティングで、そういう疲れてたところにドカ食いして胃が悲鳴を上げたと言うことですね。
 心配して同行してくれていた家内も、安心半分あきれ顔半分でした。

 診察が終わった頃には、何とか痛みもおさまって歩いて帰ることもできました。
 家に帰って寝ていたら、息子がやってきて「心配して損した」とぼそり。
「なんで。本当に痛かったんだぞ」と言うと、「だって、牛丼特盛りにアンドーナツに焼き肉だろ。そりゃ食べ過ぎだよ。俺だって牛丼は並、腹が減ってても大盛りだよ」と言って去っていきました。
 ぐうの音も出ません。
 でも、息子よ。黙っていたが、父は牛丼特盛りに生卵もつけたのだよ。
 と、いうわけで、50過ぎの疲れた胃には生肉はいかんらしいです。 みなさんもお気をつけ下さい。


(更新 2011/3/ 3 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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