伝統ある芝居小屋、「嘉穂劇場」への思い |AERA dot. (アエラドット)

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伝統ある芝居小屋、「嘉穂劇場」への思い

文・中島かずき

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 劇団☆新感線公演『鋼鉄番長』も、無事大阪公演を終え、最後の福岡公演の幕が開きました。
 一時はどうなることかと思った公演ですし、場所が嘉穂劇場ということもあり、福岡公演の初日には、絶対行こうと決めていました。
 嘉穂劇場はそのくらい思い入れのある劇場なのです。

 最初にここに来たのは高校三年生の時ですから、もう30年以上前になります。
 その時、高校演劇の地区大会の会場がここだったのです。
 嘉穂劇場のある飯塚市は、僕の故郷の田川市とは山一つ越えた隣りの市になります。高校生くらいだと、自分の校区以外のことにはあまり詳しくはない。この小屋に来たのも、それが初めてでした。
 でも、一歩足を踏み入れた時から、独特の佇まいに魅入られてしまいました。
 桟敷席に両花道、一階客席と舞台を包み込むように張り出した二階客席。
 それまでの地区大会で使われていた市民会館のような施設とは異なる、うまく言葉にはできないがとてもワクワクする感じを覚えたのです。
 この舞台で、自分が書いた脚本が上演されることが幸せでした。
 今にして思うと、あの時、また一歩、芝居の世界に踏み込んでいたのかもしれません。
 それからずっと、「いつかもう一度、自分の芝居をこの小屋でかけたい」と思っていました。
 28歳で『阿修羅城の瞳』を書いた時も、心のどこかに嘉穂劇場という芝居小屋をイメージしていました。
 だから、2003年の水害で劇場が閉鎖されるかもしれないという噂が出た時には、焦りました。
 劇場主である伊藤家と数多くの人の尽力により、劇場再開の目途が立ったと聞き本当に安心もしました。
 
 今回、自分の脚本でないのは残念ですが、それでも新感線公演を嘉穂劇場でやれるということは、本当に嬉しいことです。
 いのうえひでのりも、30数年前の地区大会の時に、僕らの学校の公演を観にわざわざ福岡市内から足を運んでくれたので、二人並んでこの劇場に立つのは高校生以来。
 嘉穂劇場も危機を乗り越え、新感線も主役降板という危機を乗り越えて実現したこの公演です。
 改めて、数々の幸運の上に成立したんだなと、関係者のみなさんに感謝します。
 
 水害復興時に、ささやかながら寄付もさせていただいたのですが、伊藤さんはそれを覚えていて下さったようで、過分な感謝の言葉をいただきました。
 今回5日間の公演が満員御礼になり、若いお客さん達で劇場がいっぱいなのが何よりも嬉しいと仰っていました。
 これをきっかけに、この町にこういう劇場があるということを若い世代に知ってもらえたらいいなと思います。
 30数年前の自分がそうであったように。


嘉穂劇場 公式サイト


(更新 2010/12/16 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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