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江戸の夜空に・・・花火に思う『大江戸ロケット』

文・中島かずき

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 今日の東京は猛烈に暑いです。
 日差しが強いを通り越して、もう凶暴です。力任せにねじ伏せてくる感じ。
 アブラゼミの声がして、もう夏真っ盛りですね。
 夏と言えば花火。
 今年はめずらしく隅田川花火大会を見に行ってきました。

 花火の量がすごいのはわかってるけど、それを遙かに凌駕する人の数。それを思うだけで辟易してしまい、長年東京に住んでいますが、今まで一度も足を運んだことはありませんでした。
 それが今年は、会社の仕事でつきあいのあったある企業の花火見物をかねた納涼パーティーに招待されたのです。
 その会社は花火大会の打ち上げ会場のすぐ近くにあるので、花火を見るには恰好の場所。
 ありがたいお話だと、いそいそと出かけてきました。

 パーティー会場もそれなりに混雑していましたが、外の道路の込みように比べれば、遙かに楽。
 しかも屋上から見ると、空いっぱいに広がる花火の迫力に、見ている客は声を上げ、終わるといっせいに拍手が起こります。
まさに「空いっぱいに、見事な絵が描かれているなあ」と感心し、「まてよ、こんなセリフ、どこかで聞いたことがあるぞ」と考えてみれば、『大江戸ロケット』の主人公、玉屋清吉のセリフ。なんのことはない、自分が書いていたものでした。

 この『大江戸ロケット』という作品、2001年に新感線の舞台でやった後、アニメ漫画とメディアミックスで展開したのですが、どうも不憫な作品なのです。

 まず、何といっても忘れられないのが、舞台の本番中、主役の俳優が逮捕されてしまった事件です。
 一時期ワイドショーをにぎわしたので、覚えている方もいるでしょう。
 大阪公演の休演日に大麻所持で逮捕されるなんて、まったく信じられませんでした。 残りの大阪公演は中止せざるを得ませんでしたが、そのあとに一ヶ月間予定されていた東京公演までやめてしまうと大変な損害になります。
 代役に山崎裕太くんを迎えて、東京公演はなんとかやりきりました。二週間足らずで本番を迎え、立派にこなした山崎くんには本当に助けられました。
 
 2007年にテレビシリーズとしてアニメ化されました。
『鋼の錬金術師』で大ヒットを飛ばした監督:水島精二、脚本:會川昇のコンビが、次に手がけた意欲作。これ、声優陣も豪華だし、アニメも楽しく出来上がっているのですが、もう一つ認知されていません。江戸っ子の花火師がロケットを飛ばすというシチュエーションがアニメファンにはピンとこないのか、僕が関わったアニメで言ってもちょうど『天元突破グレンラガン』と同時期だったせいで、印象が弱くなっているのかもしれない。
 アニメに先行して「アフタヌーン」で、コミック版も連載されていたのですが、漫画家の体調不良でこれも中断してしまいました。漫画は漫画で独自の展開をしていて面白かったのですが・・・。

『大江戸ロケット』という物語は、自分としてはかなり気にいっています。アニメも漫画もそれなりに出来がいい。
 でも、ヒットに結びつかないっていうことがあるのですね。
 なかなか難しいものです。


(更新 2010/8/ 5 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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