アクセルから竜に戻れない!?大人の事情でお蔵入りの『仮面ライダーW』 (2/2) |AERA dot. (アエラドット)

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アクセルから竜に戻れない!?大人の事情でお蔵入りの『仮面ライダーW』

文・中島かずき

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 今回、二人目のライダー、仮面ライダーアクセルというのは、ライダー自身がバイクに変身するのですね。発表された時に「ライダーがライドされてどうする」と、ネットなどでもツッコミが入ったのですが、これはなかなか衝撃的です。
 このアクセルに変身するのは、両親と妹を怪物に殺されて復讐を誓う照井竜という若者で、結構ハードな設定なのですが、それがバイクに変わるというギャップが面白い。
 で、たとえば敵の攻撃により、バイク形態から戻れなくなったらどうだろうと。普段シリアスな性格な分だけ、こういう時は困るだろう。
 例えばそこに通りがかったスケバンの女子高生が、何かの事情でこのバイクに乗っちゃう。(対立する不良とケンカして逃げるためとかの理由で)照井としては、自分がライダーであることは明かせないので、仕方なく普通のバイクとして振る舞う。スケバンはこのバイクが気に入りドンドン暴走族仕様にしていく。排気管のばして竹槍にしたり、ごてごてペインティングしたり。
 最初はいやがってた照井も、スケバンの不器用だがそれなりに筋の通った生き方に共感して友情が芽生えたりしてくる。
 主人公達が探しに来るんだが、あまりに変わった自分の姿がみっともなくて照井としては正体が明かせない。でも仲間が気づいて、その暴走族仕様になったライダーバイクに話しかける。
「もしかして照井?」
「・・・違います」
「喋るバイクが他にいるかよ!」
 てなわけでバレて、なんとか人間体に戻る。
 最後はスケバンに敵対する暴走族が実は怪物で、それに捕らわれたスケバンを助けるためにアクセルが活躍してめでたしめでたし、みたいなプロットが一気にできたわけです。
 こりゃドタバタ回としては結構いいぞと思い、「どうでしょ」とプロデューサー陣に聞くと、塚田さん「うーん」と顔をしかめて「アクセルのバイク、実機がないんですよねえ」。
 変身したあとのバイク形態はすべてCGで処理されて、本物のバイクはないということなのです。
 これだけの長さのドラマ、バイクを全部CGでやるには、予算が足りない。
 極めて大人の事情で、あえなく没になってしまいました。
 
 実際に書き上げた『Yの悲劇』というシナリオも気に入ってはいるのですが、いまだにこのバイク話には未練があります。
 主人公が人間からバイクになるというのが大前提の、特殊なシチェーションでのアイディアですので、他に転用できないのが残念です。 


(更新 2010/5/13 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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