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変わらないでほしい僕の聖地・新宿紀伊國屋

文・中島かずき

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 この間、ニュースを見ていて驚いたのですが、最近ミカンの売り上げが落ちてきているんだそうです。
 それも、こたつの売り上げと比例するように、同じ曲線を描いて下降している。
 日本の家庭からこたつが消えていくのと同時に、ミカンも食べられなくなっているということです。
 その理由については、ミカン単体で言えば、最近ネールアートする女性が増えて皮を剥くと爪が汚れることから、ミカンが避けられているではないかということでしたが、こたつとミカンが同じように減少している原因についてはニュースでは語られませんでした。
 でも、こたつにミカンと言えばワンセットな感じはしますよね。
 茶の間で、こたつに入って、テレビを観ながらミカンを食べる。
 なつかしい昭和の風景です。
 そういう風景が減ってきたんですねえ。 
 
 最近、時代が変わったなあと感じられるのは、新宿東口、紀伊国屋本店の界隈です。
 以前にも書きましたが、TOPSビルが閉じてしまい、シアタートップスも喫茶店のニュートップスもなくなってしまいました。
 そればかりか、紀伊國屋書店の隣のさくらやホビー館も2月いっぱいで閉店してしまう。もともと経営が厳しいとは聞いてはいましたが、なくなるのは寂しい限りです。
 ここではずいぶんゲームを買いました。
 もう15年ほど前になりますか、ゲーム攻略本の編集部にいたことがあります。
 その当時は家でも会社でも、ずいぶんゲームをやってました。ファミコンからスーパーファミコンの時代がメインでしたね。
 結婚して間がない頃、ファミコン版の『桃太郎伝説』を徹夜で朝までやっていて、会社に行くので起きてきた家内に「朝までやってるの」と冷たい目で見られ「いや、仕事だから」と言い訳したりなどということもありました。
 プレイステーションやメガドライブもやったけど、PS2が出る頃になると、書き物の仕事が忙しくなり、一番最初に削ったのがゲームをやる時間でした。
 それでも、紀伊國屋をのぞいたあとにさくらやホビー館に行くのは、ひとつのパターンになってました。
 子供が小学生の頃、プラモデルを作っていたので、その時は2階のプラモ売り場をのぞいたりもしました。
 2月いっぱい閉店セールをやっているというので、慌てて行ってきました。
『天元突破グレンラガン』に登場したグラパールというロボットのプラモがかなり残っていたのが、ちょっと寂しかったりしましたが、それはそれで仕方がないこと。
 半額以下に値下げされているものも多かったし、昔のロボットアニメのフィギュアが投げ売り状態でレジ横に積まれているのを見ると、「俺が買わんで誰が買う」と、奇妙な使命感に突き動かされていくつか買ってしまいました。

 紀伊國屋本店にも変化があります。
 オリジナルのポイントカードを始めたんですね。はす向かいのジュンク堂との競争とかもあるのでしょうか。ポイントを溜めさせることで、お客さんにまた買い物させるように思わせる。商売としては当然のことですが、「そうか、書店がそこまでやらなければならないのか」と、軽くショックを受けました。
 まあ、さっそくカードは作りましたが。そうすると何となく紀伊國屋で買うようになる。まんまと向こうの作戦にのっちゃってますね。

 でも、これで紀伊國屋のビルがなくなったら、いやだなあ。
 僕にとっては、新宿紀伊國屋と言えば、東京の代名詞でしたからね。大きな書店の中に芝居のホールがある。九州の片田舎の高校生にとっては聖地中の聖地でした。
 大学に受かって上京してきた時から変わらない佇まいでいるこのビルを見ると、ホッとします。
 地下の食堂街、少し店舗は入れ替わりましたが、僕が大学生時代からあった店も残っていて、すごく昭和の匂いを感じます。
 まだまだ頑張ってくれよと、ビルに対して声なき声をかけることもずいぶん増えました。
 未だに、思い入れ深い特別な場所なんだなあと思います。


(更新 2010/2/25 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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