去年の年末のことですが、『本の雑誌』が休刊の危機という話を耳にしました。しかもそれは、本誌の記事の中で語られているというのです。
あわてて本屋に走りました。

確かにその通りで、12月発売号の編集後記と椎名誠(しいなまこと)氏のエッセイの中で、本の雑誌社の急激な業績悪化と最悪本の雑誌が休刊になる可能性もあることが語られていました。

出版不況と言われてから随分たちます。去年も『広告批評』『月刊プレイボーイ』など、思い出深い雑誌が幾つも休刊しました。
でも、『本の雑誌』までとなるとこれは寂しい。寂しすぎる。そのくらい思い入れがある雑誌なのです。

20代から30代にかけてはこの雑誌の書評を頼りに、随分いろんな本を手にしたものです。
初めて買ったのは大学一年の春、上京してすぐのことでした。
『本の雑誌』もまだ出てから7、8号だったんじゃないかな。
 大学近くの池袋芳林堂書店で見つけたのですが、同時にバックナンバーでまだ創刊してすぐの号が置いてあったと記憶しています。

東京に出る前から憧れていた紀伊国屋書店とは別に、この池袋芳林堂書店も思い出深い本屋さんです。
通学途中にあったので毎日のように通いました。三階建てだったかな。二階の文庫売り場では、当時角川文庫で出ていた唐十郎(からじゅうろう)氏の戯曲を随分買いました。
いい本屋だったな。

しかし、数年前に閉店して今ではビックカメラか何かになっています。
気づいた時はショックでしたね。ある日久しぶりに池袋に行ってみると、なくなっている。それなりに大きな店舗だったから、閉店するとは想像だにしていなかった。自分の若い頃の記憶ごとすっぽり消えてしまったような感覚でした。今にして思うとその頃から、じわじわと出版不況がリアリティを持って迫ってきていたのかもしれません。

今回の『本の雑誌』が休刊するかもという話は、その時と同じくらいショックでした。
正直なくなると困る。困るのですが、実は自分も、この二年ほど買うのをやめていました。
会社帰りにいつも買っていた書店がつぶれてから何となく買わなくなっていたのです。

仕事が忙しくなり、雑誌を読む時間もなくなっていたということもあります。電車の中が主に読書の時間なので、他に読まなければならない本が山積みだったのです。

なるほど、確かに自分のような人間が増えれば経営危機になるかもしれない。
12月号の椎名氏のエッセイは「『本の雑誌』読んでましたとよく言われるが、だったら改めてまた読んで欲しい」というような言葉で締められていました。仰るとおりです。

心を入れ替えて、今年からはまた毎月買うようにしています。僕一人が買ってもどうにもならないかもしれないけど、まず自分にできることからやるしかないですしね。