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マガジン支えた「新人三バカトリオ」の胸つまる友情

文・中島かずき

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20代前半、夢中になって読んだマンガに小林まこと氏の『1.2の三四郎』があります。週刊少年マガジンで連載が開始した瞬間から、もう魂をわしづかみにされました。

ドタバタギャグでありながら、ストーリーの展開は熱血スポーツ物の定石を押さえている。

舞台は高校、主人公の三四郎を含めてメインキャラの総合格闘部の男達は、可愛い女の子に弱く単細胞で、回りの学生達にはダメな奴ら。でも部の存続を賭けて名門のラグビー部と試合をする辺りから物語の展開は熱血スポーツ物の定石も押さえてきます。

一見バカな男達だが、やる時はやる。ドタバタをやりながらも自分達の力で逆境を突破して自分の夢をかなえていく。

僕も劇団☆新感線の主宰のいのうえひでのりも、大好きなマンガの一つによくあげていました。新感線の作風に大きな影響を与えた作品のひとつです。

連載が始まったのは1978年。ちょうどこの時期、週刊少年サンデーでは高橋留美子(たかはしるみこ)さんがデビューし、すぐに『うる星やつら』を連載しています。

自分達と同年代の漫画家がデビューし、たちまち雑誌の人気を独占する。それが新人中心で成長してきた週刊少年ジャンプならまだしも、老舗のマガジンやサンデーの看板を背負っていく。新しい時代が来たようで、作品の面白さと同時にその現象そのものにもわくわくしていた記憶があります。

78年と言えば、サザンオールスターズが『勝手にシンドバッド』で鮮烈なデビューを飾り、『スターウォーズ』が日本公開された年。日本のエンターテインメントのターニングポイントになった年だと思っています。それまでオトナ達が作っていた娯楽が、やっと自分達の世代の感性で勝負できるようになる。そんな気がしていました。

今となっては、自分達の世代が生み出してきた物がよかったのかどうか迷うところがあるのですが、その辺のことを語り出すと長くなるので、それはまた後日。

小林まこと氏が当時のことを振り返って描いた『青春少年マガジン1978~1983』がコミックスになりました。

何も知らない19歳の新人マンガ家が、新人賞入選からいきなり新連載を始めるが、それが大ヒット作になりと、当時のエピソードをいつもの小林節で軽妙に描いています。

しかし、これはただの面白可笑しい回想録ではありません。

彼と同様にして連載を掴んだ新人、小野新二(おのしんじ)・大和田夏希(おおわだなつき)両氏。最初は『1.2の三四郎』の登場人物のようにともにバカやって仕事してという関係ですが、終盤、彼ら二人のマンガを描くという仕事に押しつぶされたかのような最期には胸がつまります。

小野氏が病魔に冒され若くして命を落としたことは、僕も記憶にあったのですが、大和田氏が自ら命を絶っていたという事実は、この作品を読むまで知りませんでした。小林氏自身も、長期連載の疲れから追い込まれて思わずアパートから飛び降りようとする描写もあります。

マンガが好きでマンガを創る人間に興味がある人なら、当時を知っている世代ばかりでなく若い世代も是非読んで欲しい傑作です。


青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス)


(更新 2009/1/29 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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