【国立科学博物館】1種のハチが9回新種記載されていた!体長3mmのハチがもつ特殊な生態がもたらした混乱に終止符 〈PR TIMES〉|AERA dot. (アエラドット)

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【国立科学博物館】1種のハチが9回新種記載されていた!体長3mmのハチがもつ特殊な生態がもたらした混乱に終止符

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【クヌギハケタマバチの成虫と虫こぶ(単性世代)】虫こぶはクヌギの葉につくられ、その内部を食べて幼虫が育つ。身近な公園にも生息。

【クヌギハケタマバチの成虫と虫こぶ(単性世代)】虫こぶはクヌギの葉につくられ、その内部を食べて幼虫が育つ。身近な公園にも生息。

【クヌギハケタマバチの生態】オスとメスがいる両性世代とメスだけの単性世代を交互にくり返す。成虫の姿、虫こぶの形やつくられる部位は2つの世代で異なる。

【クヌギハケタマバチの生態】オスとメスがいる両性世代とメスだけの単性世代を交互にくり返す。成虫の姿、虫こぶの形やつくられる部位は2つの世代で異なる。

【クヌギハケタマバチの虫こぶ(両性世代)】クヌギの雄花につくられ、綿のようにふわふわとした毛で覆われる。

【クヌギハケタマバチの虫こぶ(両性世代)】クヌギの雄花につくられ、綿のようにふわふわとした毛で覆われる。

【クヌギハケタマバチの成虫(両性世代)】単性世代の成虫より体は一回り小さく、橙色と黒色のツートンカラーの体色が特徴。

【クヌギハケタマバチの成虫(両性世代)】単性世代の成虫より体は一回り小さく、橙色と黒色のツートンカラーの体色が特徴。

- 文化庁



 独立行政法人国立科学博物館(館長:林良博)は、九州大学との共同研究により、日本などに生息するハチの一種、クヌギハケタマバチ(ハチ目:タマバチ科)が、これまでに9回にわたって新種として名前(学名)が与えられていたことを突き止めました。これにはタマバチの仲間がもつ特殊な生態が関係していました。



 本研究は、クヌギハケタマバチの形態的特徴を最新の分類体系に合わせて明確化し、本種に与えられた複数の学名を1つに整理することで、その学名の使用における混乱を解消するとともに、タマバチ科における生態解明の重要性を強調したものです。



 本研究成果は、2021年4月6日、アメリカ昆虫学会が発行する国際学術雑誌『Annals of the Entomological Society of America』のオンライン版に掲載されました。

研究の背景

 タマバチ科は世界で約1,400種が知られる、体長1~6mmほどの小型のハチで、日本からも80種以上が記録されています。その多くは身近な公園などにも生息し、「どんぐりの木」として知られるコナラ属の樹木に「虫こぶ」という巣のようなものをつくって暮らしています。虫こぶの形やつくられる部位はさまざまで、タマバチの種ごとに決まっています。



 コナラ属に虫こぶをつくるタマバチの多くの種は、年2回成虫が出現します。このうち1回はオスとメスが出現しますが、もう1回はメスだけしか出現せず、単為生殖をおこないます。前者を両性世代、後者を単性世代とよびます。この両性世代と単性世代の間では、虫こぶの形やつくられる部位、さらには成虫の形態までもが同種とは思えないほど異なっている場合がほとんどで、誤ってそれぞれが別種として扱われていることもあります。

研究の内容



 同種のタマバチの両性世代と単性世代を誤って別種として扱わないためには、飼育実験またはDNA鑑定によって、両性世代と単性世代を結びつけ、それぞれの形態的特徴を明らかにする必要があります。今回の研究では、飼育実験によって2つの世代が結びつけられているタマバチの標本(九州大学総合研究博物館所蔵)に基づき、これまで限定的にしか知られていなかったクヌギハケタマバチの両性世代と単性世代の形態的特徴を明らかにし、最新の分類体系に適合させました。



 さらにこの標本を、オランダのマーストリヒト自然史博物館、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館に所蔵される日本産のタマバチのタイプ標本※や新種記載がおこなわれた論文中の記述、九州大学や国立科学博物館に所蔵される日本産のタマバチの野外採集標本と比較し、過去にクヌギハケタマバチの2つの世代が別種として扱われていないかを調査しました。



 その結果、クヌギハケタマバチは1904年に初めて新種記載されて以降、9回にわたって新種として発表されていたことが判明しました。最初に新種記載されて以降、両性世代と単性世代の結びつけや種内での形態変異の幅が十分に明らかにされないままであったことが、1つの種が何度も新種記載されるに至った主な要因と考えられます。



 そこで、1904年にクヌギハケタマバチの単性世代に最初に与えられた学名を有効な学名として残し、最新の分類体系に合わせて、ケロネウロテルス・ヤポニクス(Cerroneuroterus japonicus)とするとともに、その他の学名をその異名とすることで、本種に対して複数存在していた学名を1つに整理し、本種の学名の使用における混乱を収拾しました。



※タイプ標本:新種記載の際の根拠とされた(または指定された)標本。

今後の展望



 植物に虫こぶをつくる、両性世代と単性世代をもつ、といった特殊な生態をもつタマバチ科は、近年、生態学や進化生物学においても注目を集めています。そのため、タマバチ科の生態解明は、タマバチ科の学名の使用や多様性の解明にとどまらず、さまざまな生物科学分野の研究発展にも貢献することが期待されます。一方で、タマバチ科にはいまだ両性世代と単性世代の結びつけがなされていない種など、詳細な生態がわかっていない種も数多く存在します。そのような種では、クヌギハケタマバチの場合のような混乱が生じ、応用的な研究への発展が妨げられる可能性があります。本研究は、クヌギハケタマバチの事例を明らかにすることで、今後タマバチ科における生態解明がますます重要となることを強調しています。

■発表雑誌:Annals of the Entomological Society of America

■論文タイトル:The heterogonic life cycles of oak gall wasps need to be closed: a lesson from two species of Dryophanta (Hymenoptera: Cynipidae: Cynipini)

■著者: Tatsuya Ide、Yoshihisa Abe

■2021年4月6日 オンライン公開



本研究はJSPS科研費JP17H07387、JP19H00942の助成を受けたものです。


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