本来、高齢者の暮らしは生活保護ではなく公的年金が支えるべきものであり、社会制度の再構築が必要だろう(12年12月12日付朝日新聞朝刊から) (c)朝日新聞社 @@写禁
本来、高齢者の暮らしは生活保護ではなく公的年金が支えるべきものであり、社会制度の再構築が必要だろう(12年12月12日付朝日新聞朝刊から) (c)朝日新聞社 @@写禁

 長引く景気の低迷で生活保護を受ける人は年々増えているが、キャスターの辛坊治郎氏は最低賃金、基礎年金、生活保護の3者の支給額は低い順に「生活保護」「基礎年金」「最低賃金」となるのが妥当だと指摘する。

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 カナダの場合、フルタイム労働者の平均賃金を100とすると、最低賃金は40、最低保障年金額が30、そして住宅費込みの生活保護費は約20だ。これがアメリカになると生活保護の水準は極めて低く、平均賃金100に対してわずかに5しかないが、公的年金の下限が約20、最低賃金が35と、金額は違うが序列は同じだ。年金の下限と生活保護の金額がほとんど一緒の国もあるが、多くの国で、最低賃金>基礎年金>生活保護となっているのだ。

 ところが、OECD加盟国の中で、全く違う傾向を示す国が二つある。韓国と日本だ。韓国では極端に高齢者の基礎年金が低い。恐らくこれは、「親は子供が扶養するもの」という儒教的考えがあるためだろう。日本も同じく突出して基礎年金が低い。現在、東京や大阪など、都市部で暮らす一人暮らしの老人に支給される生活保護費は月額家賃込み13万円台だ。これに対して、国民年金の老齢給付の平均受給額は5万3千円。40年間、1カ月の未納もせずに支払い続けた時ですら約6万5千円に過ぎない。

 また、6都道府県で最低賃金と生活保護水準が逆転しているのはよく知られている。これらの地域では、三つの指標の順番が、生活保護>最低賃金>基礎年金となっているのだ。

 社会制度の不公正は、社会を病ませる元凶となる。額に汗して働く者が豊かな生活を保障される。新政権にはまず、この当たり前の社会作りを目指してもらいたい。

週刊朝日 2013年1月25日号