投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める「伝説のディーラー」、藤巻健史氏は消費税の増税法案をめぐる野田佳彦首相を見て、「がんばれ!」とエールを送ったという。その真意とは......。

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 民主党はだらしないのも極まっているが、野田首相のことは見直した。国民に不人気な消費税の増税法案を、軸をぶらさず通したからだ。久しぶりに日本に出現した首相らしい首相だと思う。
 
 法案は6月26日に衆院を通過したが、この期に及んで消費税率の引き上げに反対する政治家は、「緊急財政反対」と駄々をこねるギリシャ人よりひどい。

 国は今、歳入の半分近くを借金に頼っている。毎年四十数兆円の借金をどうやって借り続けられたのだろうか?

 景気減速で企業が借金を返済した。その分を金融機関が国債購入に振り向けたからである。なんとかしてしのいではきたが、破綻するのは時間の問題だ。それを少しでも遅らせるのが消費税の増税なのだ。政治家ならこの厳しい財政状況を理解してしかるべきだ。理解していないのなら勉強不足もいいところだし、知っていながら増税に反対するのは単なる「人気取り政治家」にすぎず、詐欺をしているに等しい。
 
 国が破綻すれば、地方交付税の交付もストップだから警官、消防署員、ごみ収集職員の給料も出ない。国といえどもお金がなければ何もできないのだ。悪夢である。

 庶民の味方のつもりで消費税の増税に反対した政治家は、逆に「超経済弱者」を作ると自覚したほうがよい。その事態を少しでも回避する手段が消費税の増税なのだ。

※週刊朝日 2012年7月13日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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