<ライブレポート>中村雅俊、シンフォニックライブ全国ツアーの初日・名古屋公演を開催 48年間育ててきた実りを摘む、芳醇な時間
<ライブレポート>中村雅俊、シンフォニックライブ全国ツアーの初日・名古屋公演を開催 48年間育ててきた実りを摘む、芳醇な時間

 全国4都市をめぐる中村雅俊のシンフォニックライブ【中村雅俊 Symphonic Live 2022 ~HARVEST~】の初日公演が、2022年11月10日、愛知県芸術劇場大ホールにて開催された。

 フルオーケストラ公演は昨年に続き2度目。また新たなシンフォニックライブに挑んだ今回は“HARVEST(ハーベスト/収穫)”と銘打ち、古稀を過ぎた彼自身のこれまでの歩みを辿る、そんな予感を抱かせる。少なくとも前公演の経験を経て、さまざまなアイデアが湧き出てきたというだけに、あの手この手で会場を沸かせてくれるに違いない。

 前回に続き、マエストロは海外でも活躍する円光寺雅彦。中村が主演した学園ドラマの挿入歌がオーケストラによって重厚に立ち上がり、たちまちそのたおやかな音世界に没入する。期待がふくらむなか、曲はクリスマスソングに変わり、このシーズンらしい演出に場内は聖なる夜のムードに。静かに登場した中村はクリスマスのメッセージを伝え、甘いラブソングを歌う。もちろん長きに渡って彼をサポートしてきた大塚修司も一緒だ。弦楽器、管楽器、打楽器が重なり合う音の厚み、ふくらみが早くもホール全体を包み込み、中村の歌声がしっとりと寄り添う。自ら足を運ばない限り味わえない、さながら音の万華鏡だ。

 中村が後ろに従えるのは、セントラル愛知交響楽団の演奏者たち。これまで玉置浩二をはじめ数々のオーケストラアレンジを手掛けてきた山下康介の編曲監修により、「俺たちの旅」をはじめとする自身の主演ドラマで主題歌・挿入歌になった珠玉の名曲たちも、壮大な響きとともに新たな作品として生まれ変わる。懐かしくも新しいメロディに耳を傾けながら、脳裏の片隅には中村が演じてきた登場人物たちが通りすぎる。自由奔放に生きる若者カースケ、7人の子供の世話をすることになった動物園の飼育係、総理と呼ばれ生徒たちに慕われる先生。手拍子も沸き起こり、甦った思い出は、観客一人ひとりのあの日、あの時ともシンクロさせる。

 そして中村自身も過ぎ去った日々のページをめくるように、中盤、幼いころ亡くした父への想いを込めた「父に捧ぐ」を披露。35年前に作ったという曲をいま歌うのは、今年1月に放送されたNHK「ファミリーヒストリー」で父に触れ、「おやじのことが自分の中で大きくなったから」だと語る。“あなたが生きた年を過ぎてました”“僕を抱きあげた時 どんな夢を託したのでしょうか 少しだけ叶えましたか”。実際に父が生きた年をこえた今だからこそ、歌詞が突き刺さる。

 さらには「幻のデビュー曲があるんですよ」と意味深に前置きしてから、デビュー前の慶大時代、テープに吹き込んだ歌も熱唱。めったに聴けない貴重な歌を生で味わえるのもこのライブの醍醐味だ。

 これまで1500回以上のコンサートを重ねてきた中村。今回はよりライブ感を大切に、「一人ひとりの心にとどまるよう、1曲1曲しっかり伝えたい」。公演前、彼はそう語っていた。キーワードは『感動』。「一つひとつの曲がミッションを持っているかのような、そこに感動のカケラもあるような そういう思いを提供できたら」。その言葉どおり、物語を紡ぐような中村の歌声は、巧みなアンサンブルによって色彩豊かに観客それぞれの胸を打つ。俳優として、歌手として、最近ではナレーターとしても表現の幅を広げ、48年間、第一線を駆け抜けてきたからこその懐の深さを感じる。「自分の年に合った歌の表現は絶対あるんです」。だから今も、この先も、目が離せない。

 ラストに向けてアップテンポのナンバーが続き、熱量の上がった観客は振り上げたこぶしでリズムをとって盛り上がる。「恋人も濡れる街角」ではまた一転して、しっとり迫りつつ壮大なドラマを作り上げ、歌と語りを交えながら観客を感動のフィナーレへと導く。一曲ごとに可能性を引き出され、オーケストラ仕様に昇華された楽曲はどれも、いつもとは違うグルーヴを編み出し押し寄せてきた。

 アンコールでは、1974年デビュー曲にしてミリオンヒットとなった「ふれあい」(主演ドラマ『われら青春!』挿入曲)が、胸にしみじみと音の波紋を投げかける。
 そしてメンバー紹介。ステージに立つ演奏者一人ひとりの名前を中村は真摯に読み上げる。

 「また一緒に皆さんと歌える日が来ることを信じて」最後に中村はそう結んだ。
 種を蒔いてきた道のり、そこで育まれた実り。それを摘むようなかけがえのない時間は、次へのステージへと繋がっていく。

Text: 深見恵美子
Photo: 新澤和久
◎公演情報
中村雅俊 Symphonic Live 2022 ~HARVEST~
開催日時・会場
【名古屋】11月10日(木)START 17:30 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール ※終演
【東京】11月17日(木)START 17:30 東京・東京文化会館 大ホール 
【西宮】11月26日(土)START 17:00 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【福岡】12月13日(火)START 17:30 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール

出演:中村雅俊
指揮:円光寺雅彦
サポートミュージシャン:大塚修司

管弦楽
(名古屋)セントラル愛知交響楽団
(東京)東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
(西宮・福岡) 大阪交響楽団

https://billboard-cc.com/classics/nakamura-masatoshi2022/

チケット:9,800円(全席指定・税込、特製プログラム付き)
※未就学児入場不可
問合せ
(名古屋)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(全日 12:00~16:00)
(東京)キョードー東京  0570-550-799(平日11:00~18:00 / 土日祝10:00~18:00)
(西宮)サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12:00~15:00 土日祝休)
(福岡)キョードー西日本 0570-09-2424(11:00~17:00 日曜、祝日休み)