<ライブレポート>羊文学「たくさんに人に聴いてほしい」願いを託した最新作『our hope』携え、初の全国ツアー完走

2022/07/01 18:50

<ライブレポート>羊文学「たくさんに人に聴いてほしい」願いを託した最新作『our hope』携え、初の全国ツアー完走
<ライブレポート>羊文学「たくさんに人に聴いてほしい」願いを託した最新作『our hope』携え、初の全国ツアー完走


 羊文学が6月28日、初の全国ツアー【羊文学 TOUR 2022 "OOPARTS"】の最終公演を東京・Zepp DiverCityで開催した。
 ニュー・アルバム『our hope』を携えた今回のツアーは、キャリア史上最大規模となる全国6都市7公演で行われた。ファイナルのZepp DiverCity (6/28、6/29)のチケットは即ソールド・アウト。この日も3人はシューゲイザー、ポスト・パンク、オルタナなどの文脈を感じさせるバンド・サウンド、そして塩塚モエカ(V/Gt)による凛とした鋭さとリリカルな表情を併せ持った歌を響かせ、オーディエンスを魅了した。
 オープニングはアルバム『our hope』の1曲目に収録された「hopi」。白い紗幕が掛けられたステージで塩塚が深いリバーブのかかったアルペジオを鳴らし、河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)がゆったりと楽曲をグルーヴさせ、という現代詩のようなフレーズが広がっていく。さらに前作アルバム『POWERS』に収められた「mother」では、美しく歪んだギター・サウンドによって空間を切り裂く。儚くも激しいメロディ・ライン、3人のコーラス・ワークも素晴らしい。
「雨」が始まると紗幕が落とされ、「こんばんは、羊文学です! ようこそ“OOPARTS”へ!」という塩塚の声に観客が腕を上げて応える。さらにというラインが会場を包み込んだ「光るとき」、“きみ”と離れ離れになる瞬間を鮮やかに切り取った「砂漠のきみへ」を披露し、最初のMCへ。
「羊文学 Tour 2022 “OOPARTS”、今日が最後です」(河西)
「全国6か所のツアーは初めてでしたけど、こうしてみなさんと最後を迎えられてとても嬉しく思っています」(塩塚)
 としみじみとしたトークを挟み、「『you love』というEPに入っている夏の曲を演奏してみようと思います」と「なつのせいです」、羊文学流のロックンロールと呼ぶべき「あの街に風吹けば」を演奏。そして、この後はアルバム『our hope』の収録曲が次々と披露された。
 ポスト・パンクのテイストを感じさせるシャープな音像が突き刺さる「電波の街」、オルタナ的な歪さを感じさせるコード感とという切実なフレーズが共鳴する「金色」。ステージ後ろの幕が開き、海の水面、都市の風景を映し出しながら演奏された「キャロル」(ディスコミュニケーションや分断を背景にした歌詞にグッときました)、繊細なアルペジオのフレーズ、タイトなビートとともにの虚しさや焦燥を滲ませる「くだらない」、フォーキーな手触りの弾き語りから始まり、ノイジーな爆音サウンドへ移行した「予感」――。
 ポップ感度を上げ、より開かれた印象を与えると同時に、内省的な表現もじっくりと突き詰めたアルバム『our hope』。ステージの上で生の空気に触れた楽曲たちは、さらに豊かな芳香を放っていた。以前はどこか淡々とした印象もあった羊文学のライブだが、この日は演奏のダイナミズム、立体的な音響を含めて、ドラマティックなステージを展開。3人で音を出し、オーディエンスに届けることに対する喜びがダイレクトに伝わってくる表情も心に残った。
 ツアー・タイトルにもなっていた「OOPARTS」では、煌びやかな光が飛び交い、浮遊感と解放感のあるサウンドとともにという歌詞を放ち、“ノスタルジックな未来感”と呼ぶべきイメージを出現させた。エンディングでは一瞬のブレイクを挟み、音源にはなかったアウトロを演奏する演出も。映像、照明、サウンドが有機的に結びついたエンタメ性もこのツアーの成果だろう。
「楽屋で昔のライブの写真とかを見ていて。今、こんなにたくさんの人がライブに来てくれてるのが本当に嬉しいです。ありがとうございます」という感謝の言葉から、塩塚はアルバム『our hope』について話し始めた。
「“たくさんの人に聴いてほしい”というテーマを掲げて制作しました。きっかけとしては、『光るとき』がTVアニメ『平家物語』の主題歌になったことや、『マヨイガ』(映画『岬のマヨイガ』主題歌)もあるんだけど、一番大きいのは次にやる曲。“これだったら思い切りポップにアレンジしても、自分たちでもやれるんじゃないか”と勇気をもらった曲です」
 アルバムの起点になった「パーティーはすぐそこ」は、この日のライブにおいても大きな役割を担っていた。どこまでも解放的なメロデイ、というフレーズ、そして、この楽曲を受け取り、身体を揺らすオーディエンスの姿は、今回のツアーの充実ぶりを象徴したと思う。
 ミラーボールの光の中で世界への愛を高らかに響かせた「マヨイガ」(塩塚、河西のハーモニーが美しい!)、フクダのシャープなビート、塩塚のキレのいいギター・ストローク、アンサンブルの要を担う河西のベース・ラインが気持ちよく絡み合った「あいまいでいいよ」、そして、まるでオーロラのようなライティングとともに壮大で切ないメロディ、まだ見知らぬ世界へと“君”への思いを映し出す歌詞で会場を包み込んだ「ワンダー」で本編は終了。
 アンコールでは、鋭利なバンド・サウンドと“人間とは?”という根源的なテーマに根付いた歌が一つになった「人間だった」を披露。河西によるリラックスした雰囲気のグッズ紹介を挟み、塩塚は観客に向かって話しかけた。
「昨日、バンドを組んだときの最初のメンバーがライブを観に来てくれて。あの二人がいなかったら今の羊文学もいないんだなと思って。お客さんが来てくれなかったらバンドは続けられなかったし、その日の自分たちとお客さんが積み重なって、今日を迎えることができました」「これからももっといろんなことができるように、自分たちにやれることを積み重ねていこうと思います」
「夏フェスでよくやってる楽しい曲」(塩塚)という「powers」、金属的な響きをたたえたギター・リフに導かれた――塩塚のJaguar、本当に音がいい――「夜を越えて」でライブはエンディング。メンバーがステージを去ってもなかなか鳴り止まない拍手がこのツアーの充実ぶりを物語っていた。
 この夏、【SUMMER SONIC】や【RISING SUN ROCK FESTIVAL】、【ROCK IN JAPAN】など大型フェスに出演。音楽性の広がりと重なるように、ライブ・バンドとしても著しい成長を遂げた羊文学は、ここからさらなる飛躍を果たすことになるだろう。
Text by 森朋之
Photo by Yuki Kawashima

◎公演情報
【羊文学 Tour 2022 “OOPARTS”】
2022年6月28日(火)
東京・Zepp DiverCity Tokyo
<セットリスト>
01. hopi
02. mother
03. 雨
04. 光るとき
05. 砂漠のきみへ
06. なつのせいです
07. あの街に風吹けば
08. 電波の街
09. 金色
10. キャロル
11. くだらない
12. 予感
13. OOPARTS
14. パーティーはすぐそこ
15. マヨイガ
16. あいまいでいいよ
17. ワンダー
-En-
18. 人間だった
19. powers
20. 夜を越えて
◎配信情報
『羊文学 Tour 2022 “OOPARTS” Live Streaming』
アーカイブ配信:~7月3日(日)23:59予定
配信視聴チケット:3,000円(tax in.)
販売期間:~7月3日(日)20:00まで

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