<ライブレポート>秦 基博、ピアノと共に魅せたプレミアムな一夜
<ライブレポート>秦 基博、ピアノと共に魅せたプレミアムな一夜

 2022年5月27日、オフィスオーガスタの30周年を記念したライブシリーズの第7弾として、Billboard Live YOKOHAMAで秦 基博のスペシャルライブ【Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.7 秦 基博 Billboard Live YOKOHAMA 2nd Anniversary Premium Live】が開催された。ピアノと歌のみの編成で行われたプレミアムな公演の1stステージの模様をお届けする。

 会場が暗転し、客席から秦とトオミ ヨウ(Pf)がステージに上がると、1曲目に披露されたのは1stアルバム『コントラスト』に収録されている「風景」。歌とピアノのシンプルな編成と、黒のシックな衣装が相まり、会場は“大人のライブ”という言葉が非常に似合う雰囲気に包まれた。そして繊細であると同時にパワフルさ/力強さを感じさせる秦の歌声が光る。

 「今日は食事しながらライブを観れるんですよね?羨ましい限りです」「最後までゆっくり楽しんでいただけたらなと思います」という笑いを交えたMCを経て、暖かさを感じるメロディーとロングトーンが印象的な「泣き笑いのエピソード」とファルセットが美しいドラマチックな「トレモロ降る夜」を立て続けに披露。前者では観客もクラップで応える場面もあった。

 続くMCでは「ピアノと歌だけのライブは今日が初めて」と語り、「(本公演用の楽曲アレンジも手掛けた)トオミ ヨウさんも大変だった」と続けた。その中でも、キャリアを通して、そして今回のライブに向けて「アレンジがいろいろ変わっていった曲」として紹介されたのが「初恋」だ。歌詞の切なさ、悲しさ、虚しさ、そして照明が醸し出す哀愁にが感情のこもった秦の歌唱を引き立てる。自分も曲に浸るように体を揺らしながら歌う様子に釘付けになった。そこから畳み掛けるように少しダークでシニカルな「恋の奴隷」へ。匠にファルセットへと切り替える見事な歌唱力を見せつけてくれる。

 「せっかくピアノと歌の編成なので、普段できない曲を」という紹介から披露されたのは、2009年に客演した冨田ラボの楽曲「パラレル feat. 秦 基博」。後光のように白い照明が楽曲、特にドラマチックさが増していく後半パートに絶妙にマッチしていて、聴覚だけでなく視覚的にも引き込まれていった。
 
 そこから、4月にリリースされたクールでセクシーさも感じられる「Trick me」、後半からどんどんジャムセッションのように展開していく「夜が明ける」、そして希望や温もりを感じさせる優しいサウンドの「Girl」と繋げていく。「Girl」が終わると、本日一番盛大な拍手が巻き起こったのが印象的だった。

 続いて披露されたのは、7月に公開される映画『映画ざんねんないきもの事典』の主題歌に決定している新曲の「サイダー」。同作の予告編で部分的には聴けるものの、まだ正式にはリリースされていない楽曲だ。どこか可愛らしい、背中を押してくれるような感覚になる同曲から、ガラッと会場の雰囲気を染め替えたのが「鱗」。懐かしさを感じさせるピアノのフレーズに、この日一番のパワフルな歌唱で届けられた同曲が終わると、中々拍手が鳴り止まなかった。

 MCでは、今回の企画である【MUSIC BATON】に触れ、「Office Augustaは30周年。自分は15年だけど、本当にすごいことだと思う」と祝福。「Office Augustaはファミリーではあるけど、同時に“個人”の集まりであって、音楽を通して会話する時はお互いすごく真剣。先輩から受け継いだものを後輩に伝えたい…後輩に慕われないけど(笑)。バトンが回ってきたので次にも渡したいと思います」と笑いを交えつつ語った。

 本編のラストを飾ったのは、壮大でドラマチックな「水彩の月」。タイトルのイメージにピッタリな月光を想起させる照明、そして感情が溢れ出るかのような秦の歌声に鳥肌が立つ。後半に照明が青く変化したのも絶妙に世界観に合っていた。

 曲が終わり、盛大な拍手の中で二人がステージを去ると、すぐさま拍手がアンコールを求めるクラップへと切り替わる。それに応えるように、間もなくステージが明転する。

 再びステージに登場した秦は「ありがとうございます!(アンコール)いいんですか?」とファンに感謝を伝える。「客席から出てくるのはあまりやったことなくて、なんか力士みたいですね(笑)」とユーモアも交えつつ、「地元のこのBillboard Live YOKOHAMAはいつか立ちたいと思っていたステージなので嬉しいです」と語った。

 正真正銘、最後の曲として披露されたのは温かなラブ・バラード「アイ」。秦の優しく寄り添うような歌声と、今回のライブならではのシンプルなアレンジによって歌詞がよりストレートに響いてくる。“心が温まる”とはまさにこの感覚のことだろうと言いたくなる。
 
 曲が終わると再び盛大な拍手の中、余韻を残すようにステージを去り、ライブは終演となった。

 8月には【SUMMER SONIC 2022】に“BEACH STAGE”のヘッドライナーとしての出演、9月からは初のファンクラブ限定ツアーが控えている秦 基博。これらの公演を通してどのような新たな一面を見せてくれるか、ファンの注目が集まる。

Text:Haruki Saito
Photo:清水ケンシロウ

◎公演情報
【Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.7 秦 基博 Billboard Live YOKOHAMA 2nd Anniversary Premium Live】
2022年5月27日(金)神奈川・Billboard Live YOKOHAMA