THE NOVEMBERS、3年ぶり全国ツアーのCLUB CITTA’公演のレポート到着

2022/05/16 18:13

THE NOVEMBERS、3年ぶり全国ツアーのCLUB CITTA’公演のレポート到着
THE NOVEMBERS、3年ぶり全国ツアーのCLUB CITTA’公演のレポート到着


 2022年5月13日に開催された、THE NOVEMBERSの3年ぶりの全国ツアー【Tour2022 – 歓喜天 –】の初日CLUB CITTA’公演の公式ライブレポートが到着した。
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 歓喜天とはインド古代神話に始まり仏教に組み込まれた守護神のひとつ。不思議と、男神と女神が抱擁する姿をとることが多い。天界には、人々から恐れられた阿修羅や不動明王など憤怒相の神が多数いるのだが、そちらではなく、互いに抱き合う愛の神様を選ぶところが今の彼ららしい。
 宗教の話は、より俗っぽくすると急にわかりやすくなる。たとえば神に反逆して追放された堕天使が、いわゆる悪魔。品行方正な優等生より、反逆的、背徳的、堕落的なものがカッコいいという感覚はポップカルチャーの世界にも根付いていて、サタンやデビルやルシファーが創作のヒントになった過去例は星の数である。確かに、ただの優等生じゃ面白くない。その気分はわかるのだけど、いえ、堕ちることなくまっとうに美しいものを選びましょうと真顔で諭すのが今のTHE NOVEMBERSなのだった。ごく自然に、ライブは天使たちの歌から始まった。
 ツアーはここから始まるので詳しい曲順は伏せておくが、アレンジと歌心には目を見張るものがある。小林祐介がいきなりサビを一人でゆったりと歌い上げる曲。美しいメロディに高松浩史が丁寧なハーモニーを添えていく曲。アコースティックギターが出てきた一曲は、誤解を恐れずに言えば歌謡曲のように歌と言葉が沁み入ってきた。総じて歌の力が強い。さらには言葉をしっかり届けようとする誠意が強い。
 THE NOVEMBERSは影のあるニューウェイブの影響下にある音楽なので、ものすごく乱暴にいえば、雰囲気がクールなら何とでもなるのだろう。それこそデビルとかルシファーみたいなことを散文的に呟いたってOKである。でも、彼らはそれをしない。カッコよさげなものより丁寧なもの。心から良いと実感できるもの。それは誠実な演奏であり、暮らしを豊かにする言葉が溢れる歌詞のことでもあった。歌と言葉がこんなに強いバンドだったかと改めて思うが、近年の小林はシンガーとして猛烈な成長を遂げている。引っ張られるように演奏もさらに丁寧になった。まだまだバンドは進化中なのだ。
 中盤からはシーケンスを組み込んだ近年の曲が並ぶ。音の奥行きは広がり、SF的なムードも入ってくるが、そこに嫌な予感がひとつもない。そのことに驚いた。ダークさはあっても、ディストピアに引き摺り込まれるような悲劇の予感がゼロ。不穏さの中にあっても怖いもの醜いものがない。これもまた、心から良いと実感できるものなのだ。
 小林がハンドマイクになるとシーケンスと相まったサウンドはさらにダンサブルになっていく。圧巻だったのは最新アルバムの楽曲から有名SFアニメ楽曲のカバーへなだれ込んでいった瞬間。優れたSF作品は超未来が舞台であっても必ず現実とつながっているものだが、このときの興奮は、まさに未来と現実と太古が一気につながり襲いかかってくる感じだった。吉木諒祐が叩き続ける太いリズムに覚醒するような生命力が宿る。前半は丁寧に演奏し、客もじっくりそれを受け取っていたが、このあたりで双方のタガは外れる。小林とケンゴマツモトが同時に高々とジャンプするなんて昔はあり得なかった。猛烈にフィジカルな興奮。観客がそれぞれ好き勝手に揺れ踊り音楽に身を委ね狂おしいほど解放されているさまは、なんだか最高に幸せなものに見えた。
 つまり、終始ポジティブなのだ。後半には悪夢のごとき爆音やドス黒いノイズもびしばし飛んできたが、前述したように怖く醜いものはどこにもない。不幸の根を根絶するための爆音というか、もっといえば心身を豊かにするためのロックミュージック。そういうことを、照れず、躊躇せず、まっすぐに伝えているのが今の彼らだ。久しぶりの全国ツアーであることに触れて「最初の気持ちでバンドをやれている。俺たち、今、いいよねって、そんな気持ちで過ごせています」と最後に小林が語っていた。優等生的だとはちっとも思わなかった。だって、まさにそんな感じだったから。今THE NOVEMBERSは、背筋が伸びるくらいまっとうで豊かな愛に溢れたバンドになっている。
 最後はこれまた言葉がぐっと染みる歌ものの新曲を披露。過不足なしの1時間半で潔くライブは終了した。アンコールの代わりには、帰り際の素敵なプレゼントが待っていて、これは消えてしまう曲よりも嬉しいかもしれないと頬が緩む。本日のセットリストの意味、ひいてはバンドがずっと伝えてきたことが、ひとつのかたちになっていたのだ。何であるかは各会場で確かめて欲しいが、ひとまず私は、お返しの言葉を、最後、7月11日に控えているZepp Hanedaで伝えようと思っている。
文:石井恵梨子
写真:宮下大輔

◎公演情報
【Tour2022 – 歓喜天 –】 ※終了分は割愛
2022年5月19日(木)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2022年5月27日(金)宮城・仙台Rensa
2022年6月5日(日)北海道・札幌SPiCE
2022年6月9日(木)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2022年6月12日(日)福岡・BEAT STATION
2022年7月11日(月)東京・Zepp Haneda(TOKYO)
チケット:
前売 5,000円(tax in./ドリンク代別途必要)
座席:
・オールスタンディング(愛知、大阪)
・全自由(宮城、北海道、福岡)
・全座席指定(東京)

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