<ライブレポート>Chara×オーケストラ東京公演、30周年を飾るプレミアムなコンサート
<ライブレポート>Chara×オーケストラ東京公演、30周年を飾るプレミアムなコンサート

 デビュー30周年を迎えたCharaが4月15日(金)に東京・Bunkamuraオーチャードホールにて、アニバーサリーイヤーを飾るオーケストラ公演「Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022 -Chara's Time Machine-」を開催した。

 オープニングを彩ったのは、世界的に活躍するマエストロ・?澤寿男が指揮する60人編成の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏による「あれはね」。1992年にリリースされた2ndアルバム『SOUL KISS』に収録されていた、ハモンドオルガンによるイントロが印象的なゴスペル調のヒップホップソウルを優美かつ勇敢なオーケストラにアレンジ。Charaが生み出したメロディをクラリネット、ヴァイオリン、ホルン、トランペットが歌い継いでいき、祝祭の幕開けが華々しく告げられた。そして、大きな拍手に迎えられて、深い緑色の衣装を纏い、頭に大きな黒い羽根をつけたCharaが登場。のちのMCで「昔の旦那との出会いの曲」と語っていたように、1991年発売の1stアルバム『Sweet』の収録曲で、岩井俊二が監督したTVドラマ「FRIED DRAGON FISH」の主題歌に起用された「Break These Chain」を丁寧に歌い上げ、コンサートは本格的にスタートした。ピアノのリフに思わずクラップを鳴らしたくなったが、Charaはオーケストラと慎重に息を合わせていき、ホールという空間を少しずつ自身の歌声の響きと愛で満たしていった。続く、心の声をこぼすかのようなCharaの歌声が優しく切ない風景を引き連れてきた「花の夢」は、1997年に大ヒットを記録した5thアルバム『Junior Sweet』から。これまでのライブではあまり歌ってこなかった楽曲だが、Charaのウィスパーヴォイスに寄り添うフルートの調べにはこの日しか味わうことのできない特別な輝きがあった。

 「Charaです。来てくれてありがとう。拍手もありがとう。いろいろな30周年の曲をつま弾いて、選んできました。事前公開していたプレイリストで予習してきてくれた方もいると思いますが、素敵な生演奏を楽しんでもらいたいと思います」

 そんなMCを経て、歌から始まる「しましまのバンビ」ではチャーミングでファンキーなグルーヴを生み出しながらステージを自由自在に動き回り、「恋の調子はどう? 私は全然ダメ」と語りかけ、ライブで恒例となっている<バンビ!>というコール&レスポンスの部分では、思わず客席にマイクを向ける場面もあった。一転して、ラブバラード「片想い」「ミルク」では、Charaは真っ直ぐに前だけを見て歌唱。オーケストラの演奏に惹き込まれているうちに、いつかの思い出が脳裏に浮かんでは消えていき、いつの間にか凝り固まった心がとき解されるような感覚があった。

 「フィリピンの言葉で、恋をすると蝶が舞う気分の状態を"キリグ"と言うそうです」と解説した「KILIG」ではビブラフォンとハーモニーを重ね、ピアノの連弾も披露。<見渡すバラードの向こう 来ちゃいなよ>っていうフレーズが耳に残る「才能の杖」では弦楽器とともに白鳥が空を飛んでいき、マイクを外したフェイクも繰り出したロマンチックなムードの「月と甘い涙」で第一部は終了した。

 約20分間の休憩を挟み、Charaは若草色と薄紫のノースリーブのドレスに着替え、頭には黒ではなく、白い羽根をつけて登壇。第二部は代表曲を中心によりダイナミックに駆け抜けた。サビでバイオリンやチェロとの会話を交わした「やさしい気持ち」。椅子に座って歌い、オーケストラだけでなく、照明までも演奏に加わったようなドラマを展開した「タイムマシーン」。そして、コーラスとのエモーショナルな歌唱と劇的な管弦楽によって観客を興奮させた「Junior Sweet」は、この日のハイライトと言えるほどの盛り上がりをみせ、演奏後には大きな拍手が湧き上がった。

 MCでは、自身の本名の由来が「おじいちゃんが好きだった女優さんの高田美和だったんだよね。私は領収書をもらうときに<美しい>に<平和の和>で<美和>と言ってます」と明かして会場を沸かせ、日々、意識することや感じることの大切さを伝えた。そして、「恋とか愛とか、全部いいな~と思いながら歌ってます。今日は体中で感じていただいて、残りの時間もCharaとのコラボレーションを楽しんでもらいたいと思います」と語った後に歌ったのは、自身が出演した岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』の主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」。今やスタンダードナンバーとなった名曲をフルオケで聴く機会はそうそうない。会場全体が幸福感に包まれる中で、ホルンやティンパニが賑やかに鳴り響く「あたしなんで抱きしめたいんだろう」では、ステージにしゃがみ込んだCharaが「ハンドクラップ欲しいってCharaが言ってます」と呟くと、観客が1つとなって盛大なクラップをわき起こし、ミュートトランペットやコントラバス、コンガがジャジーなムードと色彩を加えたラストナンバー「Happy Toy」のアウトロでは、オーケストラの演奏とコーラスとのコール&レスポンスに合わせて、<特別なライブに来てくれてありがとう。大好きだよ。言葉で伝えられない時はメロディで>と語りかけるように歌って最後まで観客を魅了すると、ステージを後にするCharaには盛大なスタンディングオベーションが送られた。

 その後も鳴り止まない拍手に応えて再登壇したCharaは、アンコールとして、1991年に発売したデビューシングル「Heaven」を大きなクラップと熱気の中で堂々と歌い上げ、「今日はありがとう。また会いたいな。また会える日まで元気でね」と再会の約束をし、三度のカーテンコールに応えて、30周年を記念したプレミアムなコンサートを締めくくった。

Text by 永堀アツオ
Photo by 岩澤高雄

◎公演情報
【Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022 - Chara's Time Machine -】
2022年3月27日(日) OPEN 16:00 / START 17:00 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール ※終演
2022年4月15日(金) OPEN 17:30 / START 18:30 東京・Bunkamuraオーチャードホール ※終演

出演:Chara
指揮:?澤寿男

管弦楽:日本センチュリー交響楽団(西宮)、東京フィルハーモニー交響楽団(東京)
編曲監修:山下康介

◎放映情報
WOWOWで7月に放送・配信が決定。