初恋の嵐×安部コウセイも実現、イベント【DECEMBER'S CHILDREN】で刺激的な面々が集う

2021/12/22 18:18

初恋の嵐×安部コウセイも実現、イベント【DECEMBER'S CHILDREN】で刺激的な面々が集う
初恋の嵐×安部コウセイも実現、イベント【DECEMBER'S CHILDREN】で刺激的な面々が集う


 音楽事務所MOVING ON主催【DECEMBER'S CHILDREN】のオフィシャルライブレポートが到着した。
 12月20日、音楽事務所MOVING ONが毎年12月に主催する恒例のイベント【DECEMBER'S CHILDREN】が恵比寿リキッドルームで開催。2012年の開催から数えて10回目となった今回も、一筋縄ではいかない個性が際立つ、とんがったアーティストが集まった。
 オープニングアクトで登場したのは、2020年代のロックンロールスター候補として彗星のように現れたWENDY。メンバーの平均年齢は若干17.5歳。欧米のロックをこよなく愛する彼らがトップバッターとして轟音を響かせる。思わず体が動き出すリフがにくいギラギラときらめくギター、地響きを立てるファットなリズム隊に乗って、セクシーで危険なムードを漂わせながら、スター感満載のボーカル・Skyeが「どうだ!」とばかりに煽る。
 序盤からドライヴィンする怒涛のパフォーマンスでフロアを圧倒。「天下を取ってやる!」と高らかに宣言するかのような気概とオーラ、ロックンロールドリームにあふれた真っ直ぐさで、どんどん突き進む。「往年のロックンロールモンスターの若き日は、こういうものだったのだろうな」。そんな思いが頭をよぎる。
 ステージのクライマックスは4曲目、Skyeが「このバンドを組んだ理由でもある」と言って始まった「Home」。「自分の居場所がわからなくなっても、友達でも、家族でも、きっと居場所はあるんだ。俺たちがここにいる。共に歩く。そんな優しさと勇気に満ちたナンバーで器の大きさを見せた。この夜、演奏した5曲は彼らが歩みだしたロックンロールの旅の始まり。数年後、大会場で狂乱のロックンロールパーティを演じている予感を漂わせながらWENDYはステージを去った。
 WENDYのライブが終わった後の転換中、フロア下手に設けられたサブステージに、奔走狂走局のボーカル・おりかわじんがアコースティクギターを抱えて登場。寄る辺なさそうでありながらも緩やかな空気をまとい、日常のワンシーンを心の機微ですくいあげたナンバーを披露する。おりかわが歌で描く物語はどこか寓話的でもあり、やさしげな一方でドキリとする鋭さも秘めている。日常のワンシーンと自分との間にある膜の前で、不安定な足場を感じさせるところがリアルでもある。
 ただ、3曲目の「恋愛虫」、4曲目の「LIKE LIKE LIKE」では、それまでに感じさせた拭えない「一人感」が、僕と君との「二人感」に表情を変えた。それは一人と一人はささやかだけども強く結びつく幸せな表情に思えた。切なくて暖かいおりかわの声と歌物語を聴いていると、大好きなあの娘のとこに行きたくなる。そんなふうに心を暖かくさせてくれるステージだった。
 3番目に登場したのは渋谷勇太と大塚理乃の男女ツインボーカルを擁するYME。2021年9月に活動を停止したsui sui duckのメンバーに大塚が加わり、YMEに改名。12月17日にシングル「First step」を配信リリースしたばかりの彼らにとって、今夜が初めてのライブとなった。
 ステージは「First step」からスタート。合唱のコーラスを含むシーケンサーも効果的に使い、祝福感の波が押し寄せる。弾ける&転がるビートで引っ張るカントリー調の「時を運んで」は渋谷と大塚の歌の掛け合いも楽しげ。曇り空が晴れていくようなカーニバル感がフロアを満たしていく。新たな形でバンド活動をリスタートさせた彼らのドキドキ感も伝わってきて、フレッシュでまぶしい。
 様々な表情を巧みに見せる達者なバンドアンサンブルに支えられ、ステージは進む。シーケンサーの音源も含めて、ウォール・オブ・サウンドさながら重層的な音がグイグイと押し寄せる。そこに男女のボーカルが掛け合う様は、まるで濃密な歌劇を見ているかのよう。単なるバンド演奏を超えて、一つひとつの歌声、歌詞、楽器の音が物語を成立させる演出でもあるようにも感じられる。バンドパフォーマンスでもあり、物語の「舞台」としても成立するYMEのライブが、これからどんな進化を見せるのか楽しみだ。
 4番手のアクトは男女混成の4人組ギターロックバンド、Pulplant。紅一点の存在としてフロントに立つ琥珀の妖艶で陰りのある歌声、テンポ・拍子・雰囲気を変幻自在に操るバンドアンサンブル、トリッキーでクセになるギターフレーズ、手数が多彩なリズムセクションが武器の注目株だ。ステージ冒頭は2020年にリリースした「夢うつつ」と2021年リリースの「仮面」をソリッドなビートでたたみかける。性急な琥珀の歌声がドラマチックに響く。
 続いては、淡々としたギターカッティングとメロディアスなベースラインで始まるミドルテンポの「無口な青とラベンダー」に。前2曲とうって変わってグッと抑えた雰囲気がかえってはやる心を掻き立てる。そして間奏では混沌とした爆裂サウンドに展開し、琥珀が大サビを歌い上げる。この起承転結のついたアンサンブルは見事だった。なお、「無口な青とラベンダー」はこの夜にミュージックビデオが公開された。「東京ボイル」では、「女性のサガ」の裏で、はかなげ可憐さも顔を見せる琥珀の歌声が色っぽくてドキリとする。そして、ここでも男性3人のアンサンブルは時にブルージー、時にカオス的爆音、時に抑揚を効かせたストイックさで、歌をドラマチックに盛り上げている。
 ステージは一気呵成に進んでいく。情念を速射砲のように放ち、ラストの2曲を演奏。琥珀の存在感、ギターロックバンドのかっこよさを存分に発揮してエンディングを迎えた。
 「歌声よし、メロディよし、バンドアンサブルよし、歌詞よし」と耳聡い音楽ファンの間で評判を呼んでいる5人組バンド、アロワナレコードが続く5番手としてステージに上がる。2019年に大学の軽音サークルを中心に結成され、2020年に「大都会-EP」2021年に「夜明け前」をリリースした新鋭だ。アロワナレコードは、なんと言ってもボーカル・藤井陸の「声の力」が圧倒的。ステージが始まった瞬間、深くリバーブがかかった藤井の一声でフロアの空気を変えてみせた。
 もうひとつ、アロワナレコードのすごみは、浮遊感漂うドリームポップ的なチルアウトと轟音による激情、抑制と爆発、暗闇と輝き、居心地の悪さとその末に見つけた居場所……そんな対極を行き来しながら、両極を表裏一体のものとして歌で描き出すこと。そして、そこには表と裏にこんがらがる末に希望を見出すかのような眼差しがある。
 この夜も、1曲目の「夜明け前」から、そんな情感をリバーブによる残響感や音の広がりのなか、歌とバンドアンサンブルが一体となって水彩画のように鮮やかに描いていった。また、心地よい音のまどろみかから一転、轟音を轟かせる展開は、誰の心にも訪れる薄皮一枚で押さえていた感情が弾ける「バチンという瞬間」を実体化したような感さえある。
 このようにして情感の両極を繰り返しながら高揚していくアロワナレコードのステージには、日々の暮らしに潜むネガティブなアレコレを浄化する輝きが訪れる。このカタルシスをぜひ体感してほしい。
 若手バンドに新生バンドが存分なパフォーマンスを見せた後、大トリとして初恋の嵐がステージに上がる。2002年にボーカルの西山達郎が急逝した後、一時は活動を休止。2011年からゲストボーカルを迎える形で活動を再開し、進化を続けてきた。ステージは「どこでもドア」のインストバージョンで始まる。初恋の嵐がたどってきた輪廻の物語のプロローグのように。
 そして、最初のゲストボーカルとしてセカイイチの岩崎慧が登場。「後出しのつもりが実はフライングだった。それは気づいてからじゃ遅い」という皮肉を歌う「フライング」、オルタナ・パワーポップ的な轟音が鳴り響く「だんだんわからなくなる」を熱唱。その轟音が鳴り止まぬなか登場したSCOOBIE DOのコヤマシュウは持ち前の粘っこい声でシンプルなビートのロックンロールナンバー「宝物」を飛び跳ねながら歌う。そこからロマンチックなバラード「星空のバラード」につなぐ。ボトルネックのギターの音色が流れ星のようにきらめき、フロアに降り注ぐ。
 3人目のボーカルで登場したのはHINTO/SPARTA LOCALSの安部コウセイ。実は初恋の嵐とは縁がある。インディーズ時代の初恋の嵐、SPARTA LOCALSは、ともに本イベントを主催する音楽事務所MOVING ONのレコードレーベル「Mule Records」で作品をリリースしていたのだ。そんな縁にも初恋の嵐の時の輪廻を感じずにはいられない。
 安倍は「喜びの余韻は消して生きていく。お前の望むものなどここには残ってないよ」という痛烈な感情を突きつける「Untitled」と、別れざるを得ない者たちの寂寥感と旅立ちの決意を綴った「涙の旅路」を披露。ハイトーンでエッジの立った安倍の歌唱は、とても一言では片付けられない思いにまみれたナンバーに見事にマッチしていた。最後はオリジナルメンバーのベーシスト、隅倉弘至がボーカルをとった「どこでもドア」で幕を閉じる。ボーカルの席がポツンと空いているなか、1曲目と対をなすエピローグのように……。
 ニューカマーからベテランまで刺激的な面々が集った今年のDECEMBER'S CHILDREN。時の流れを経ても世代を超えて貫かれる表現者のスピリットを感じさせるイベントとなった。
Text by 山本貴政
◎セットリスト
【DECEMBER'S CHILDREN】
2021年12月20日(月)東京・恵比寿リキッドルーム
■WENDY(開演時アクト)
01.Devil's Kiss
02.Pull Me In
03.2 Beautiful 4 Luv
04.Home
05.Runaway
■おりかわじん(サブステージアクト)
01.紙飛行機
02.つり革におつかまり下さい
03.恋愛虫
04.LIKE LIKE LIKE
■YME
01.First step
02.時を運んで
03.心の魔法
04.花時
05.Smile
■Pulplant
01.夢うつつ
02.仮面
03.無口な青とラベンダー
04.東京ボイル
05.あいつがあいつでいる訳
06.迷宮戦争
■アロワナレコード
01.夜明け前
02.あいより出でて
03.幽霊
04.大都会
■初恋の嵐
01.どこでもドア(インスト)
02.フライング(ゲストボーカル:岩崎慧)
03.だんだんわからなくなる(ゲストボーカル:岩崎慧)
04.宝物(ゲストボーカル:コヤマシュウ)
05.星空のバラード(ゲストボーカル:コヤマシュウ)
06.Untitled(ゲストボーカル:安部コウセイ)
07.涙の旅路(ゲストボーカル:安部コウセイ)
08.どこでもドア(ボーカル:隅倉弘至)

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