<ライブレポート>南佳孝フェス【I WILL 69 YOU】開催 ?ラスト・ワルツ?を彷彿させるような貴重にして素晴らしい一夜
<ライブレポート>南佳孝フェス【I WILL 69 YOU】開催 ?ラスト・ワルツ?を彷彿させるような貴重にして素晴らしい一夜

 主役が古希(70歳)を迎える前年に東京で初開催され、大阪でも2020年3月に開催が決定していたものの、やむなく再三の延期を重ねてきた南佳孝フェス【I WILL 69 YOU】。8月5日にようやくなんばHatchで開催に至ったステージは、小原礼(b)+屋敷豪太(ds)による鉄壁のリズム隊をはじめとする実力派ぞろいのメンバー、そして南と繋がりが深い豪華ゲスト陣が次々と登場し、ザ・バンドの伝説的な?ラスト・ワルツ?を彷彿させるような貴重にして素晴らしい一夜となった。

 ニューオーリンズ調の軽快なビートに乗せて「Desert Storm」から幕を開けたステージは、一転してしっとりと聴かせる人気曲「Scotch & Rain」を挟み、キング・クリムゾンへの参加などで知られるトニー・レヴィンが80年代前半にアレンジを手がけた「Chat Noir(黒)」へ。タイプの違う3曲で会場を南ならではの音世界に引き込むと、最初のゲストとして呼び込まれたのは、近年に2枚のコラボ・アルバムを発表してきた杉山清貴。NHKのラジオ深夜便のテーマ曲にも選ばれた「海へ行こうか」をデュオで歌うと、続いては南の弾き語りに杉山がハーモニー豊かに絡む形で「Nostalgia」を。改めて南にハーモニーの楽しさを認識させた、息の合ったコラボで楽しませた。

 そして、次にゲストで迎え入れられたのは、18年に発表したアルバム『Dear My Generation』にも1曲参加した太田裕美! 最初はその共演曲「トキメイテ」を再演し、可憐な歌声とトークで沸かせると、次に取り上げられたのは彼女の代表曲である「木綿のハンカチーフ」。最初のパートは南がギターを弾きながら歌い、異色のデュエット形式によるこの日ならではのバージョンで名曲を響かせた。

 さらにここで、南と太田を繋ぐ人物ということでサプライズゲストとして呼び込まれたのが、作詞家で現在は関西在住の松本隆。作詞家として関わった両者のデビュー時のエピソードや、松本にとって作詞家としての第2期の始まりとなったのが南の「スローなブギにしてくれ」だったことなど。貴重なトークがステージ上で交わされると、その流れを受けるように松本が作詞し、鈴木茂が作曲したティン・パン・アレーの名曲「ソバカスのある少女」を。南の2ndアルバムの冒頭を飾ったグルーヴィーな「これで準備OK」に続いては、薬師丸ひろ子がカバーして「メインテーマ」としてヒットさせた「スタンダード・ナンバー」も飛び出し、尽きない名曲の連続で後半へと流れ込んでいった。

 続いて、最後のゲストとしてステージに現れたのは、南と同じく73年にデビューした宇崎竜童。初めて会った時のことや、宇崎が実はデビュー前に南の『摩天楼のヒロイン』を購入して聴いていたことなどを話すと、スパニッシュなギターワークも鮮烈な弾き語りでダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「サクセス」を熱唱した。入魂の1曲で場内を一気に宇崎ワールドへと塗り替えると、続いて取り上げられた問答無用の「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」では、南と宇崎が交互にリード・ボーカルを取るこれまたスペシャルな展開で、会場のテンションをさらに高めた。

 そして、本編の最終ブロックは和製AOR~シティ・ポップの真骨頂を示すような、グルーヴ豊かなサウンドと独特のダンディズムに貫かれた歌で南のド真ん中を堪能させる名曲の連打へ。洗練を極めた傑作『South Of The Border』(78年)に収録された「プールサイド」「日付変更線」、ボサノバ調の弾き語りから「Midnight Love Call」、サンバのビートに乗せてバックの精鋭たちのソロ回しもフィーチャーした「月夜の晩には」を経て、ラストはディスコ/ファンク成分を増した伴奏とともに「モンローウォーク」を。再評価の気運も高まる時期の代表曲を隙のない演奏とともに畳みかけた。

 アンコールでは、3人のゲスト・ボーカリストを含む出演者全員が改めて一同に会し、4人が交互にリードを取りながらの「スローなブギにしてくれ」、そして宇崎がかつて山口百恵に提供した名曲「さよならの向う側」を。最後には、作詞者でトーク・ゲストの松本隆も再登場し、松本と南の共同プロデュースで84年に発表された『冒険王』のタイトル曲で締めた。なお、この日のライブの模様は同時収録が行われ、9月17日(金)20時~23日(祝)23時59分にStreaming+ などでアーカイブ配信されることが決定している。

 また、11月には南のビルボードライブ大阪と東京でのソロ公演が今年も開催される。これまでに生み出された新旧の名曲群と、その温かい人柄の垣間見えるトークを、ぜひ会場で堪能していただきたい。

Photo:渡邉一生

◎公演情報
【南佳孝】
ビルボードライブ大阪
2021年11月11日(木)
1stステージ 開場14:30/開演15:30
2ndステージ 開場17:30/開演18:30
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=12898&shop=2

ビルボードライブ東京
2021年11月18日(木)
1stステージ 開場14:00/開演15:00
2ndステージ 開場17:00/開演18:00
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=12899&shop=1