ABBA、メンバー参加の生配信イベントで40年ぶりの新作リリース&“革新的”なライブ開催発表
ABBA、メンバー参加の生配信イベントで40年ぶりの新作リリース&“革新的”なライブ開催発表

 1974年に「恋のウォータールー」でブレイクして以来、世界中で愛され続けているスウェーデンのポップ・スーパーグループ=ABBAが、40年ぶりに復活することが明らかになった。

 日本時間2021年9月2日の午前2時からグループの公式YouTubeチャンネルにて生配信された約1時間に及ぶイベントでは、世界中のファンが見守る中、完全新作スタジオ・アルバム『ヴォヤージ』の発売や10人編成の生バンドとデジタル共演する革命的なコンサート【ABBA Voyage】の開催が発表された。加えて、アルバムから「アイ・スティル・ハヴ・フェイス・イン・ユー」と「ドント・シャット・ミー・ダウン」の2曲が先行リリースされた。

 今回のイベントのために、ABBAの地元であるスウェーデン・ストックホルムに登場した特設会場には、発表を心待ちにするグループの“スーパーファン”が多数集まった。米ニューヨークのセントラル・パーク、アイスランド・レイキャビク、ドイツ・ベルリン、ブラジル・リオデジャネイロなどにも中継が繋げられ、様々な世代のファンがABBAに対するそれぞれの思いを語った。

 また、地元の著名音楽ジャーナリストのJan GradvallがABBAミュージアムから、グループの世界的な影響力や魅力について解説した。ABBAの楽曲はリリースから何十年経った今も色褪せることなく、愛され続けているが、彼はその理由について「ダイレクトでキャッチーだが、“ダンシング・クイーン”、“ザ・ネーム・オブ・ザ・ゲーム”など100回聴いてもまだ新しい発見がある。シンプルなようで、とても複雑なんだ」と分析している。

 そしてストックホルム会場前方のスクリーンのカウントダウン画面がゼロになると、過去のパフォーマンスやレコーディング模様を織り込んだモンタージュ映像とともに感動的なバラード「アイ・スティル・ハヴ・フェイス・イン・ユー」が初公開された。メンバーのビョルン・ウルヴァースは、この新曲について、事前撮影されたインタビュー映像の中で「ベニーがメロディを弾いた瞬間、これはきっと私たちについてだ」と感じたと明かしており、「私たちが今いる場所は、信じられないところだと思う。どれほど想像力があってもこれはきっと思いつかないはずだ。40年経った今、ニュー・アルバムをリリースすること、今でも親友でいて、お互いと一緒に時間を過ごすことを楽しんでいること、そしてお互いに対して忠誠心を持ち続けていること。このような(絆を)経験しているのは、他に誰もいないと思う」と話している。

 また、ベニー・アンダーソンは、同インタビューでニュー・アルバムをリリースすることになった経緯について、「最初にできたのは2曲だった。“どうだろう、もう数曲作ってみないか、ガールズ”と訊いたら、彼女たちは“イエス”と言ってくれた。そこで私は“じゃあフル・アルバムを作ろう”と提案したんだ」と振り返っている。

 後半では、英ロンドンの展望塔アルセロール・ミッタル・オービットの頂上へと映像が切り替わり、メンバーのベニーとビョルン本人が生出演。ニュー・アルバム『ヴォヤージ』が完成したことに加え、二人の背後に見えるクイーン・エリザベス・オリンピック・パークに新設された3,000人収容の<ABBAアリーナ>で2022年5月27日より【ABBA Voyage】が開幕することが伝えられた。

 人気司会者のゾーイ・ボールと行われたインタビューの中で二人は、ジョージ・ルーカスが設立したインダストリアル・ライト&マジック社の850人のチームと共に制作された【ABBA Voyage】やその内容について話した。コンサートのために、グループは“まるでNASAのような”スタジオで、何週間もかけてモーション・キャプチャの作業を行ったそうだが、そのために男性メンバーの二人は髭を剃る必要があったそうで、ベニーは50年間も蓄えて続けていた髭に別れを告げなければならなかったと語った。セットリストに関しては、メンバーたちの個人的なお気に入り楽曲も含んだ“グレイテスト・ヒッツ”的な内容になる予定で、約1時間半で全22曲が披露されるとのことだ。もちろん公開されたばかりの2曲の新曲も盛り込まれている。

 また、アグネタとアンニ=フリッドが今回のイベントに参加していない理由について、ベニーは「二人にも来て欲しかったけれど、彼女たちはビョルンほど、こういう場が好きじゃないんだよ。でもきっとライブ配信を見ていると思うよ」と茶目っ気たっぷりに話し、会場は和やかな雰囲気に包まれた。アグネタとアンニ=フリッドを“本物のミュージシャン”と形容したビョルンは、「自分が作った音楽や歌詞を二人に歌ってもらえるのは光栄でしかない」と述べた。続けてベニーは、「アルバムはすでに完成しているが、彼女たちも出来にはとても満足していると思う」と話し、再び全員でスタジオ入りした時のことを「実際には40年経っているけれど、全く月日が経っていないような気がした。本当にアメイジングな感覚だった」と振り返った。

 イベントのフィナーレでは、各中継先の様子とともに、2曲目のシングルとなるアップビートなポップ・ナンバー「ドント・シャット・ミー・ダウン」が解禁された。
 
 なお、復活に合わせて寄せられたABBAのメンバーからのコメントは以下となる。

 「私達が最後に一緒に音楽を作ってから、随分時が経ちました。実に約40年ぶりです。1982年春に活動を休止したのですが、そろそろそれに終わりを告げようと決意しました。前のアルバムと次のアルバムとの間に40年以上の間隔を空けるのは無謀だと言われています。それで私達は今回、前作『ザ・ヴィジターズ』に続く作品をレコーディングしました。実を言うと、再びレコーディングを行うことに、私達を駆り立てた最大のインスピレーションの源は、想像を絶するような、今までに見たことのない壮観なコンサートの制作に関わったことでした。来春、ロンドンの特設アリーナで、デジタルに再現された私達ABBAが自分達の曲をステージ上で演奏する様子を、私達自身も観客席に座って見ることができるようになるのです。不可思議ですが素晴らしいですよね!

この数十年にわたり、何らかの方法で私達のことを辛抱強く見守って下さった皆さんへ。

大変お待たせしました - いよいよ新たな旅の始まりです」

「私達はこれを "ヴォヤージ(Voyage)航海"と呼んでいますが、正に未知の海原へと私達は船出しようとしているところです。若き日の自分達の力を借りて、未来へと旅立つ。言葉で説明するのは容易ではないのですが、これは前例のないものです」

「今回のプロジェクトで、私(ベニー)が一番楽しんだのはどの部分か、それは簡単には言い表せません。皆と共にコンサート制作に携わったことであるとか、あるいは40年ぶりに一緒にまたスタジオへ戻ってきたことであるとか。フリーダとアグネタの歌声を再び聴くことが出来るのも、このプロジェクトにおける最上級の醍醐味だと思います。このアリーナに足を運んでいただくと、素晴らしい10人編成のバンドを従えた私達4人がそこにいます。たとえ生身ではなくても、クリエイティブ・チームとILMの素晴らしい仕事のおかげで、私達は正にその場に存在していることでしょう」

「2018年に行った最初のセッションは、とても楽しいものでした。そのあとベニーから電話がかかってきて、もう少し歌ってみるのはどうかと訊かれ、私(フリーダことアンニ=フリッド)はすぐに飛びつきました。それに、あの素晴らしい曲の数々ときたら!! 卓越した才能に溢れた、正に天才的なこのソングライター達に、私から敬意と愛を捧げます。このグループともう一度また一緒に仕事ができて、どんなに嬉しかったか。この作品にとても満足していますし、ファンの皆さんにも同じように感じていただければと願っています」

「スタジオで再会した時は、これから何が起こるのか、私(アグネタ)には見当も付きませんでした……。でも、ベニーのレコーディング・スタジオは、とても和気藹々とした安心できる環境だったので、いつの間にか心から楽しんでいました! この作品を世界の皆さんと分かち合える時がとうとうやって来たなんて、信じられないくらいです!」

「あの二人は本当に驚くほど素晴らしいシンガーで、彼女達の歌唱力に、私(ビョルン)は完全に圧倒されました。彼女達は真のミュージシャンです。ポップスターの華やかな面に心を奪われることが全くなく、今も変わらず、レコーディング・スタジオで創造性を発揮することを多いに楽しんでいるのです。この“ヴォヤージ・プロジェクト”は、色々な意味で、私達に新たな息吹を吹き込んでくれました」

「では繰り返しとなりますが、お待たせしました!待っていて下さってありがとう!<ABBAアリーナ>で、皆さんにお会いできるのを、そう“お会い”できるのを、楽しみにしています。私達はこのアバターに、相当な心血を注ぎましたから。私達は復活したと、そう言っても過言ではありません」

アグネタ、ビョルン、ベニー、アンニ=フリッド
2021年9月2日 スウェーデン ストックホルム

◎リリース情報
アルバム『ヴォヤージ』
2021/11/5 RELEASE
※日本盤CDは全4形態で発売
※日本盤のみCDはすべてSHM-CD仕様

Photo: Baillie Walsh