<ライブレポート>[Alexandros] “偶然”の積み重ねが導いた【ALEATORIC TOMATO】大阪2日目公演
<ライブレポート>[Alexandros] “偶然”の積み重ねが導いた【ALEATORIC TOMATO】大阪2日目公演

 [Alexandros]が2021年7月31日、全国ツアー【ALEATORIC TOMATO Tour 2021】(7か所・14公演)の大阪公演をZepp Osaka Baysideで開催した。新ドラマー・リアド偉武の正式加入後、最初の全国ツアーで4人は、[Alexandros]のこれまでの軌跡、そして、この先のビジョンをダイレクトに示してみせた。

 会場が暗転し、エレクトロニカ的なSEとともにメンバーが登場。赤いピンスポットに照らされた川上洋平(Vo. / Gt.)が鋭利なフレーズを響かせ、ツアータイトルを冠したインスト曲を披露。セッションを楽しむ川上の笑顔とともにライブは幕を開けた。多彩なビートを絡ませた「For Freedom」、ヘヴィなリフ、キャッチーなコーラス、サイケデリックな間奏パートなどを融合させた「Boo!」、そして、「跳べますか、大阪?!」(川上)と呼びかけ、解放的なサビのメロディを放つ。冒頭から「これぞ[Alexandros]!」と快哉を叫びたくなるシーンが続き、観客も気持ちよさそうに身体を揺らしていた。

 ライブ前半でもっとも印象的だったのは、「Waitress, Waitress!」だった。3rdアルバム『Schwarzenegger』(2012年)に収録されたこの曲は、このバンドを象徴するライブアンセムのひとつ。川上はアコギを弾き、ジャジーな間奏パートを加えることで、深みのあるアンサンブルが実現されていた。川上、磯部寛之(Ba. / Cho.)、白井眞輝(Gt.)、リアドのプレイヤビリティを活かした質の高い演奏、奔放なアイデアがひとつになったこの場面は、同じことを続けることを良しとせず、常に進化と変化を繰り返してきた[Alexandros]のスタンスを端的に示していたと思う。川上の「声を出せないことを言い訳にするんじゃねえぞ! 配信で観てる奴らも家のなかで叫べ!」という煽りも楽しい。

 雨や雷の音、そして、サポート・キーボードのROSEの繊細なフレーズが聴こえてきて、ライブの雰囲気は一変。穏やかで切ないムードのなかで演奏されたのは、「Thunder (Bedroom Joule ver.)」 。川上はギターを弾かず、電子音を取り入れた音響のなかで美しい歌を奏でた。叙情性を感じさせるメロディと<苦みも知らず 刺激も知らず/死にたくはないのさ>というリリックの対比にも心を揺さぶられた。

 「カップルで(配信を)観てる人、(会場に)来てる人、失恋の歌を歌います」(川上)という言葉に導かれたのは、「Leaving Grapefruits」のアコースティック・バージョン。アコギの音色と<これ以上ない程の感情を出して/疲れ果てたのかな>というラインが溶け合い、哀切な思いが浮き彫りになる。繊細な感情の機微を描いた楽曲もまた、[Alexandros]の魅力だろう。

 中盤のMCでは、まず「大阪2日目、来てくれてありがとうございます。ルールを守っていただいて、こんなに素晴らしい光景のなかでやれることに改めて感謝します」とコメント。さらに“偶然性”を意味するツアータイトル“ALEATORIC”について説明した。[Alexandros]の楽曲は「鼻歌レベルの」(川上)デモをもとにメンバー全員の直感や“偶然”出てきた音を重ねながら作られること。そして、観客との出会いも“偶然”の積み重ねだと思っていること。その言葉からは、“偶然を必然に結びつけて、ここまで来た”という自負がはっきりと感じられた。

 「最高の仲間が加わってくれました!」とリアドを改めて紹介し、「新人バンドだと思って、これからもよろしくお願いします!」と笑顔で叫び、ライブは後半戦に突入。白井がボーカルを取った「SWEET DAYS」(BLANKEY JET CITY)のカバーから「You're So Sweet & I Love You」 につなぎ、「This Is Teenage」ではリアドのキックに合わせて手拍子が巻き起こった。

 ここからは“すべてがクライマックス”と言っても過言ではないシーンが続いた。イントロが始まった瞬間に観客が一斉に手を挙げた「Starrrrrrr」。大らかなサビの旋律を歌い、「大阪、いつか一緒に歌おうな!」(川上)と呼びかけた「風になって」。川上が再びアコギを手にして、<マイナスの感情は マイナスだけじゃないよ>というメッセージ性の高い歌詞を届けた「Philosophy」。楽曲を重ねるごとに高揚感と一体感が増していく様子はまさに圧巻だ。

 「下北沢にあるUKプロジェクト、<RX-RECORDS>はもともと、メロコアのレーベルでした。我々は本来、もっと暴れられるバンドです!」というシャウトとともに放たれた「Beast」によって、ライブの興奮はピークに向かう。ロングヒットを記録中の「閃光」(映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)、「Mosquito Bite」(映画『BLEACH』主題歌)を凄まじい熱量で演奏し、本編ラストの「PARTY IS OVER」へ。大きなスケール感をたたえたサウンド、<君がいないとはじまらないよ>というフレーズがひとつになり、心地いい感動が生まれた。

 スクリーンに映し出された“CLAP”の文字ともに手拍子が生まれ、再びメンバーがステージに登場。「ワタリドリ」「Kick&Spin」という代表曲を続けざまに披露し、会場のテンションをさらに引き上げる。最後は「LAST MINUTE」。<「さよなら」その日まで/「いつまでも」遊びましょう>という歌詞には、メンバー自身のリアルな思いが確かに刻まれていた。「次に会ったら、思う存分騒ごうぜ!」と叫んだ川上の姿は、すべてのオーディエンスに大きな勇気を与えたはずだ。

 [Alexandros]は7月28日にLIVE Blu-ray&DVD『“Where's My Yoyogi?” at Makuhari & Documentary』をリリース。そして10月には横浜アリーナと日本武道館にて【ALEATORIC ARENA 4 DAYS】の開催も決定。新体制となり、新たなスタートを切った[Alexandros]はここから、新たなピークに向かって突き進むことになるだろう。

Text by 森朋之
Photos by 河本悠貴

◎セットリスト
【ALEATORIC TOMATO Tour 2021】2021年7月31日公演
1. タイトル未定
2. For Freedom
3. Boo!
4. Girl A
5. Dear Enemies
6. Waitress, Waitress!
7. Don't Fuck With Yoohei Kawakami
8. Thunder (Bedroom Joule ver.)
9. vague
10. Leaving Grapefruits (Aco ver.)
11. You're So Sweet & I Love You
12. This Is Teenage
13. Starrrrrrr
14. 風になって
15. Philosophy
16. Beast
17. 閃光
18. アルペジオ
19. Mosquito Bite
20. PARTY IS OVER
<アンコール>
1. ワタリドリ
2. Kick&Spin
3. LAST MINUTE

※ROSEの正式表記は、Eにアキュート・アクセント付き