<ライブレポート>全員ボーカルの4人組バンドHi Cheers!、お披露目ライブで見せたオールラウンドなポップネス
<ライブレポート>全員ボーカルの4人組バンドHi Cheers!、お披露目ライブで見せたオールラウンドなポップネス

 【Hi Cheers! お披露目Live「大変気持ちがいいでShow!!」】が、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催された。

 Hi Cheers!は、2020年に結成された男女4人組バンド。メンバーの上野正明(Vo./Gt.)、高村風太(Vo./Key.)、Chie(Vo./Gt.)、月川玲(Vo./Ba.)は、それぞれソロやユニットでも活動しており、Hi Cheers!では全員がボーカル、作詞、作曲を担当している。この日行われたライブは、Hi Cheers!としては初の有観客ライブとなる。

 「マツケンサンバII」のイントロに合わせ、ステージにメンバーが登場。下手から上野、月川、高村、Chieの順で横一列に並び、「ABCがワカラナイ」からライブはスタートする。サンバの陽気なサウンドに乗せ、4人の個性の異なる歌声が賑やかにオープニングを飾る。

 2曲目「恋はケ・セラ・セラ」では、高村がメインボーカルを担当。メンバー全員がボーカルを担えるバンドというだけあり、他の3人も次々と入れ替わるコーラスワークを難なくこなしていく。初の有観客ライブということもあってか、1曲目では真剣な面持ちのメンバー達だったが、この曲では時折お互い顔を見合わせ笑顔を見せるなど、次第に緊張も解けていったようだ。

 MCを挟み突入した中盤戦では、高村のポップ職人的ソングライティングが光るツインボーカル曲が続く。高村と月川がボーカルを務めるディスコナンバー「(not) just for show」では、ここまで座っていたオーディエンスも続々と立ち上がり、思い思いに体を揺らす。続いて披露された上野とChieがボーカルを務める「Remember」は、80's風のシックなバラードで、ここまでの明るく楽しいムードとはまた異なったHi Cheers!の一面が垣間見られた。

 メンバー全員がボーカルを担えるということは、それだけ楽曲の表現の幅も広がるということ。それを特に感じたのが、月川とChieがボーカルを担当した「monologue」だ。甘い歌声で幼さを感じる月川と、落ち付いた雰囲気のChieという、歌のキャラクターが異なる2人がボーカルを担うことで、曲の語り手のイメージが固定されず、想像の幅が広がる。“歌”という聞き手を選ばないポイントを武器にできるメンバーが4人もいるということは、他のバンドにない、とっておきのアドバンテージと言えるだろう。

 そして、さらにバンドの底力を感じさせたのが、『Hi Cheers!のチキチキ10分クッキング』のコーナーだ。本コーナーは、音楽雑誌「B-PASS」にて連載中の、お題に合わせて10分で即興曲を作る企画の出張版。今回は、会場に設置されたアンケートボックスに集まったお題の中から2つをチョイス。くじ引きの末、テーマは「板橋」と「メソポタミア文明」に決まった。

 まず、高村がスマホで該当ワードを検索し、大まかな概要を決める。並行して上野がコードをつけ、セッションをしながらオケを作っていく。板橋出身の上野から繰り出される板橋に関連するキーワード(「大きめのスポッチャがある」「ラーメン激戦区」など)から、高村が歌詞とメロディを同時にアウトプットしていき、あっという間にワンコーラスが完成。出来上がった楽曲の即興とは思えぬ完成度の高さに、オーディエンスからは拍手が巻き起こった。

 ライブ後半戦は、上野がメインボーカルを務める新曲「Jungle」から威勢よくスタート。前身バンド時代の楽曲「今夜はBebop time」では、小気味良いリズムにクラップが自然と巻き起こる。「こんな大勢のクラップ久しぶりにみたよ!」と興奮気味の上野に、高村が「アニメのセリフか!(笑)」とすかさず突っ込み笑いを誘うシーンも。また「陳腐なラブソングのせいにして」では、演奏中に高村が物販の宣伝を始め、オーディエンスのド肝を抜いたりと、演奏はもちろん、それ以外でも来てくれた人達を楽しませようとする気概が感じられた。

 「Hi Cheers!は去年の7月から始動したんですが(ライブができなくて)この1年間もどかしくてね。これからはたくさんライブやっていきますので、気軽に遊びにきてください」(上野)と、集まったオーディエンスに感謝を伝えるメンバー達。ラストは、この1年間を通して感じた“音楽をやる理由”をテーマにした新曲で、お披露目ライブは締めくくられた。<言葉じゃきっと伝えきれないから 僕らは音に思いを乗せて>というワンフレーズが印象的な、決意表明のような一曲はフィナーレにぴったりで、終演後もしばらくアンコールを望む拍手が鳴り止まなかった。

 この日、会場にはメンバーと同世代と思われる若者からその親世代まで、幅広い年齢層のオーディエンスが集まっていた。Hi Cheers!の全方位にポップなスタイルは、ライトなリスナーからコアな音楽ファンまで、これからさらに多くの人々に支持されていくだろうと予感したライブだった。

Photo by Shingo Tamai

◎公演情報
【Hi Cheers!お披露目Live 「大変気持ちがいいでShow!!」】
2021年6月25日(金)
東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
<セットリスト>
01. ABC がワカラナイ
02. 恋はケ・セラ・セラ
03. (not) just for show
04. Remember
05. monologue
06. Jungle(未発表楽曲)
07. 親愛なる遠い君へ
08. 今夜はBebop time
09. 陳腐なラブソングのせいにして
10. タイトル未定(未発表楽曲)